大河ドラマ、鎌倉殿の13人、会社でも大いに盛り上がっている。特に部長以上クラスが、夢中になって見ている…法律が整備されていない混沌の時代だからこそ、その状態をいかに治めていったのか興味があるのだろうか。戦国時代が好きなお偉いさんも多いな。人前で話す機会も増えるので、歴史上の教訓の1つも話せると、インテリっぽいという理由で歴史をかじり始めると、はまってしまう人もいると聞く。

 

そして「俺の部下は少ないから、鎌倉殿の3人」などと、大して(いや全く)面白くないネタで、部下と会話しようとする部長さんも出没するのだ。ほかの社員が相手にしないので私が「頼家がまだ若く、みんなで支えねばならないから13人もいたのですよ。3人で済んでいるのなら、それは部長が、補佐役はほとんどいらないほど、頼りになるという証拠です。ちなみに、13人というのは、代理兼補佐役(という名目の、政を仕切りたい者たち)のことで、部下のことではありませんからね。」と応答すると、たいそう喜び(わかりやすい皮肉を込めたつもりなのだが)毎週月曜日になると、「昨日の話をしよう」と目を輝かせて寄ってくる。

 

「きっと実朝暗殺のあと、公暁を殺すのはトウだと暗示していますよね。トウと三浦の殺陣シーンで、公暁の乳母である三浦が、直接手を下さず、トウに命じる、という筋書きが予想できます。あと、りくは、平家でかつて、幼い頼朝や義経ら源氏の子供たちに殺生をしてはならぬと、清盛に助言をした池禅尼の姪っ子という説が有力なんですよ。京育ちでもともと平家側の人間だから、がさつな坂東武者になじめずにいたようにも読み取れますよね。それにしても、池禅尼のような慈悲深い方の姪(妹という説もあるらしいが、年齢的にどうだろう?)が、どうしてあのような権力欲にまみれた女性になるのでしょうね。まぁ、同じ血筋でも、所詮別の人間ってことですよね。それはそうと、実朝の前で、これからの鎌倉を率いていくのは北条だなんて、失礼ですね、ひそかに傷ついたのではないかと心配しています。私は判官びいきならぬ、実朝びいきですから。しかも和田殿、それを忘れていて実朝に言わせるなど、失礼極まりない…そういえば、私の予想ですが、和田合戦に巴御前が鎧姿で最期を飾るのではないかとひそかに期待しています。もう一度、勇ましい巴の武者姿を見たいと思いませんか?」

と一気に感想を述べると

「・・・・・いや、もう、義時と時政のシーンで泣いてしまって。それ以外よく見てない」と言い出す。

「情に流されて部下を観察する力がないと、生き馬の目を抜けませんよ」

とあからさまに皮肉を言ってしまった。

 

本音を言えば私もあのシーンが頭から離れない。小四郎はこれからウグイスの鳴き声を聞くたび、父を思って泣くのだろうか。すっかり頼朝に似てきたブラック義時が、伊豆にいたころのような幼さの残る声で、父との別れを惜しむシーンは、語りたくても私が泣いてしまいそうだから敢えて外したのだが、上司はわかってくれただろうか。

 

「そうなんだよ、いくら歴史を学んでも、人をコントロールする術は一向に身につかないのが悩みでね・・・」

(あまりわかってくれてないらしい)

 

「歴史に名を残した人は、そういうことに、並外れて長けた人たちですからね。そのまま真似をしても難しいですよね。それよりドラマを思い切り楽しみましょうよ」

 

「そうだな・・・わしはのえが、回を追うごとに憎めない女性になっていくのが面白かった。そういえば、小四郎は平賀朝雅が諸悪の根源のように言っていたが、それは違うと思わないか?だって朝雅がりくの息子を殺さなければ、りくは、もっとすさまじい勢いで我が子を時政の跡継ぎに、と考えるだろうね。それはそれで、もっと面倒くさいと思うんだよ。」

 

なるほど!! いい視点ではないのかい??

歴史ドラマは、ストーリーが分かっているだけあって、どこに着目するか、どの説が自分にはしっくりくると思うか、でその人となりが何となくわかる。面白くもないたとえ話ばかりしていると思っていたが、案外、地味だけど重要なポイントに気づいている人なのだ。それは仕事に確かに現れているようにすら思えてくる。

 

ドラマで感想を言い合うの、意外と相手を知る大きな手掛かりになるのかもしれないと感じた、月曜日のランチタイムであった。