NHK交響楽団第2045回定期公演 Bプログラム2日目　（サントリーホール）

指揮：ヘルベルト・ブロムシュテット

フルート：セバスティアン・ジャコー

グリーグ／組曲「ホルベアの時代から」作品40

ニルセン／フルート協奏曲

（ソリスト・アンコール）

ドビュッシー：シランクス

シベリウス／交響曲第5番変ホ長調作品82

98歳、世界最高齢の指揮者、巨匠ヘルベルト・ブロムシュテットが今年も来日してくれた！ヨーロッパから10時間以上のフライト、大丈夫なのかといつも心配しているのだが、本当に凄いことだ。

巨匠は歩行器を使って自力で歩いて登場。ここ数年は常にそうだが、椅子に座ったままの指揮である。

1曲目は「ホルベアの時代から」。弦楽器のみで演奏されるこの曲、サイズは10-10-6-4-3対向配置と小さめ。非常に美しい歌に満ちた表現で、N響の弦セクションの素晴らしさが十分に発揮されている。藤森氏のチェロ、今更ながら上手いと痛感。ここでの巨匠のアプローチ、オーケストラにかなり任せているような印象だ。

2曲目はセバスティアン・ジャコーをソロに迎えてのニルセン。弦の編成は1曲目と同様だ。ジャコーのフルートの音色が素晴らしい。音に芯があってすっきりと伸びていくし、音に華があってとても明るい音なのだ。彼はベルリン・フィルの首席フルート奏者に就任するも、試用期間でクビになってしまったわけだが、こんな上手い奏者をクビにするベルリン・フィルというのは本当に恐ろしいオーケストラである。

オーケストラは1曲目に比べると非常に音が引き締まっていて、こちらは巨匠ブロムシュテットの意図がしっかり反映された演奏である。

ジャコーのアンコールは素晴らしいドビュッシーのシランクス。彼のリサイタルもぜひ聴いてみたいものである。

後半は16-16-10-8-6に拡大してシベリウスの交響曲第5番。スウェーデンの巨匠であるブロムシュテット、隣国のフィンランドの大作曲家であうシベリウスの演奏も多いと思いきや、意外に日本における実演では多いとまでは言えない。個人的には、巨匠が演奏するシベリウスを実演で聴いたのは全てN響との演奏で、交響曲第2番（2003年、2008年）、ヴァイオリン協奏曲（2011年）トゥオネラの白鳥（2024年）のみ。ただ、サンフランシスコ交響楽団とは交響曲全集を録音している（デッカレーベル、1989年〜1995年）。

以前巨匠がN響で演奏したシベリウスの交響曲第2番は、まるで宗教曲のような敬虔な祈りに満ちた感動的なものであったが、今回の交響曲第5番もやはり宗教音楽のような祈りがある上に、シベリウスの音楽としてはかなり温かみと滋味にあふれた表現だった。

強弱の幅はそこまで大きくなく、金管のフォルテッシモは以前に比べるとやや統制を欠いて大き過ぎるところもあったし、第3楽章で弦が弱音器を付けて演奏するピアニッシシモも、そこまで極端に音を絞っていたというわけではない。しかしN響が巨匠の意図をしっかりと汲み取り、とても人間的で温かい音楽を作っていたのがよかった。

シベリウスのこういう温かみと丸みがある演奏、オッコ・カム指揮ラハティ響で聴いたことがあった。もう10年も前のことである。

https://ameblo.jp/takemitsu189/entry-12101003441.html　

ブロムシュテットはこの10月のA定期、C定期も振る予定。

なお、すでに来年2026年10月のブロムシュテット来日予定が発表されている。ブルックナーの交響曲第5番と、特別演奏会におけるブラームスの交響曲第2番、4番を演奏する予定。実現すればなんと99歳での来日ということになる。同じく来年の10月に86歳で来日する予定のクリストフ・エッシェンバッハは、ベートーヴェンの交響曲第8番、5番などと、特別演奏会におけるブラームスの交響曲第3番、1番を演奏する予定。

来日時に99歳のブロムシュテットよりも、先日の松本でかなり耄碌が進んでいるように見えた86歳のエッシェンバッハの方が心配である…

総合評価：★★★★☆

ジャコー、ブロムシュテット指揮N響 グリーク、ニルセン、シベリウス交響曲第5番（2日目）

ジャコー、ブロムシュテット指揮N響　グリーク、ニルセン、シベリウス交響曲第5番（2日目）