都響スペシャルをサントリーホールにて（16日昼）。

指揮／アラン・ギルバート

ヴァイオリン／樫本大進（ベルリン・フィル第1コンサートマスター）

ヴィオラ／アミハイ・グロス（ベルリン・フィル第1ソロ・ヴィオラ奏者）

アイヴズ（ブラント編曲）：コンコード交響曲より「オルコット家の人々」【アイヴズ生誕150年記念】

モーツァルト：ヴァイオリンとヴィオラのための協奏交響曲変ホ長調 K.364（320d）

（アンコール）

ドヴォルザーク：テルツェット op.74 第2楽章

　（ヴァイオリン／アラン・ギルバート、樫本大進、ヴィオラ／アミハイ・グロス）

ベートーヴェン：交響曲第5番ハ短調 op.67《運命》

NDRエルプフィル（北ドイツ放送響）首席指揮者、スウェーデン王立歌劇場音楽監督を務めるアラン・ギルバートによる都響スペシャル。

今年生誕150周年のアイブズ、コンコード交響曲は原曲のピアノ・ソナタを、ヘンリー・ブラントが交響曲として編曲したもので、今回演奏されたのはその第3楽章「オルコット家の人々」。古き良きアメリカ、というテイストがベースになっているほのぼのとした楽想のなかにベートーヴェンの運命の動機が聞こえるこの曲、後半の「運命」への伏線となっている。アランの指揮は実におおらかであり、都響の演奏は歌にあふれる佳演。14型。

続いて演奏されたシンフォニア・コンチェルタンテ、自分の大好きな曲である。ここでソロを務めたのはベルリン・フィルの2人の首席奏者。12型の縮小したオーケストラの響きは引き締まっており、颯爽とした印象を与える。樫本大進、アミハイ・グロスの音は想像した以上に柔らかく、ベルリン・フィルをバックに演奏した場合とは違うアプローチだったかもしれない。アミハイの音、前はもう少し深い音だったと思うのだが、今回はやや軽めに聞こえた。

アンコールはアランがヴァイオリンで加わってのドヴォルザーク。この美しい曲は聴きものであった。アランのヴァイオリン、なかなか上手い。

後半は14型、オリジナル2管編成でベートーヴェン5番。アランらしく引き締まったフォルムで推進力が高い演奏で、特段奇をてらったことを一切しない正攻法の演奏である。楽譜はベーレンライター版ではないようだ。

都響の音、先日フルシャが振ったときはいつもと全然違う響きだったのだが、アランが振るとまた別の音がするから面白い。とても密度が濃く重厚で、そのうえしなやかだ。アラン・ギルバートが首席を務めるNDRエルプ・フィル（旧北ドイツ放送響）を振った映像がYouTubeで観られるが（2022年2月27日のライヴ）、そのときの演奏よりも、今回の都響の演奏の方が引き締まっていてモダンな印象を受ける。

平日昼公演にもかかわらず客席はほぼ埋まっていた。会場に大友直人氏の姿あり。

総合評価：★★★☆☆

アラン・ギルバート指揮都響 アイヴズ、モーツァルトの協奏交響曲、運命（16日）

アラン・ギルバート指揮都響　アイヴズ、モーツァルトの協奏交響曲、運命（16日）