ミューザ川崎シンフォニーホール&東京交響楽団 名曲全集第129回。

指揮:ヘルマン・ボイマー

トランペット:マティアス・ヘフス

 

ドヴォルザーク:交響曲第9番 ホ短調 作品95「新世界より」

ケルシェック:ラッパ達が鳴り響き(日本初演)

ヤナーチェク:シンフォニエッタ

 

昨年の1月、やはり東響の定期演奏会に出演し、その驚異的な技術と伸びやかな音楽性を披露したトランペットのマティアス・ヘフス氏が東響に再登場。

そして指揮者のヘルマン・ボイマー、日本での知名度は低いが、1992年から2003年までベルリン・フィルのバス・トロンボーン奏者だった指揮者である。その在籍期間は、クラウディオ・アバドがベルリン・フィル音楽監督であった時期とほぼ一致する。ベルリン・フィルほどのオケに入団しても、飽き足らず指揮者になろうとは…

著名オーケストラ・プレーヤー出身の指揮者というと、思いつくままにあげると最近ではマンフレート・ホーネック(ウィーン・フィルのヴィオラ出身)、グスターボ・ヒメノ(コンセルトヘボウ管の打楽器出身)、セバスティアン・ヴァイグレ(シュターツカペレ・ベルリンのホルン出身)あたり、故人ではヘルマン・シェルヒェン(ベルリン・フィルのヴァイオリン出身)、ワルター・ウェラー(ウィーン・フィルのコンマス)、ニコラウス・アーノンクール(ウィーン響のチェロ)、シャルル・ミュンシュ(ゲヴァントハウス管のヴァイオリン)など。まあ何が言いたいかというと、弦が圧倒的に多いということ。管楽器奏者が奏者としての寿命を考えて指揮者として第二の人生を歩む、というのは山のようにあるが、ボイマーは38歳かそこらでオケを退団している。

 

前半は新世界交響曲。名曲全集の前半プロで超名曲新世界とは、きっとやっつけ仕事なのだろうと思いきや、意外にこれがいい演奏だった。ボイマーの演奏スタイルは筋肉質でフォルムがしっかりしており、金管出身の指揮者らしくとても金管楽器の響かせ方が上手いように思われたのは気のせいだろうか。弦は対向配置で13-12-10-8-7。

 

後半はヘフスが登場し、まずはケルシェック(1969〜)の新作。ちなみにヘフスが前回東響と共演したときも、ケルシェック「トランペット・ダンス」という曲が演奏されていた。音楽は大衆に理解しやすいタイプで、まるで映画音楽のように親しみやすいものであるが、芸術的価値はどうかよくわからない。ヘフスは大小3つのトランペットと見た目ミニホルンとも言うべきコルノ・ダ・カッチャを自在に吹きこなした。まるで鼻歌を歌っているように!超絶技巧は言うまでもないが、その音の伸びやかでどこまでも広がっていくかのようなしなやかさ、やはりただ者ではない。弦は12-10-8-6-5。

この曲、トランペットのバンダ(別働隊)が10名程度いて、客席左右・中央で吹奏、その後移動して舞台へ、最後はヘフスとともに舞台最前列でファンファーレを吹いて終了という、トランペットを存分に響かせる快感にあふれた音楽だ。ちなみに、今回ヘフス氏の隣でトランペットを吹いていた東響首席奏者佐藤友紀氏はヘフスの弟子である。

 

トランペット奏者たちによるアンコールのあとは、ヤナーチェクのシンフォニエッタ。あの村上春樹「1Q84」で一躍有名になったクラシック音楽である。こちらではトランペット9、テナー・テューバ2、バス・トランペット2のバンダが舞台右手後方に陣取り、冒頭と最終楽章の輝かしいファンファーレを吹奏。このバンダにはヘフス氏も参加していて、やはりこういう人が舞台にいると全体が触発されて素晴らしい演奏になった。ボイマーの指揮は前半の新世界に比べるとこちらではちょっとおとなしめか。この曲では弦が13-12-10-8-7に復活。

 

終演後のサイン会にはブラス少年少女が列をなしていた。

 

 

総合評価:★★★☆☆

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