最近,出生前診断が話題になっています。99%の確率でダウン症か否かが出生前にわかるというもの


うちの息子の三尖弁閉鎖症は,出生前の胎児心エコー検査で分かりました。産婦人科の医師からその結果を告げられたとき,人工妊娠中絶の選択肢があることを,半ば機械的に(私たちにとって,中絶を選択する可能性が初めからなかったから,そのように聞こえたのかもしれません。)説明されましたが,私たち夫婦にとって,その選択肢を選択する可能性は,まったくありませんでした。


三尖弁閉鎖症がとても重い疾患であること,息子も私も一生病気と闘い,付き合っていかなければならないことを考えても,嫁のお腹に宿っている命を故意に絶やすということはまったく考えられませんでした。


経済的な理由等で育てられないといった場合を除いて,中絶を選択するという人は,いろいろな理由でそうしたのだとは思いますが,生まれてきた子の人生,その親の今後の人生にネガティブなイメージを抱いているのかと思います。


ただ,私の家庭には,その病気の息子が生まれ,この5か月の間に,入院,カテーテル検査,BAS,肺動脈絞扼術,外来の頻繁な通院と経て,今後もカテーテル検査,グレン手術,フォンタン手術,薬との付き合い,不整脈の危険などなど,越えなければならないハードルを並べれば,果てしなく続いていきますが,現在の息子を育てる家庭の状況は,病気の子をもつ一般的なイメージ(息子を持つ前に私が抱いていたイメージ),「暗い」,「悲壮感」,「いつも必死」・・・とはかけ離れています。


やっぱり,「普通の子」を育てるのとは違う,悲しいこと,つらいこと,涙を流すことが多いけれど,限りなく「普通」に近い,というよりも,「普通の子」を育てるのでは感じられない幸せを感じ,家族の絆を深め,試練に耐える心を育んでいます。


ほんとうに,息子が生まれてきてよかった。


現在の出生前診断は,いったい何のためにするのかの議論が置き去りにされている気がします。「生まれてくる子がかわいそう」というは,生まれる前のお母さんのお腹の中で親に殺される子の方がかわいそうです。親の人生を狂わせたくないというのであれば,それは宿った子の命を無視した,きわめて自己中心的な考え方ではないでしょうか。命の選択のための出生前診断は,誤りだと思います。