先日。長男の半蔵が五年半お世話になった歌舞伎教室『寺子屋』に「今月で卒業させていただきます」とご挨拶に行ってきました…☺️
寺子屋の事は今までブログではあまり触れてきませんでしたが。忘れたくない五年半なので、差し支えのない範囲で記録に残したいと思います。
そもそも始まりは、半蔵が3歳の頃。
『にほんごであそぼ』のDVDを観ていて、当時の市川染五郎さんが歌舞伎ダンス的な…『いざやかぶかん』というのを踊っていて。それにどハマりした半蔵が、延々と「ガッテンかぁ、ガッテンだぁ!!」と踊り狂っていたところ、ヨッシーの友人に「歌舞伎の教室が始まるみたいだよ」と教えていただいたのがきっかけでした。
半蔵に「歌舞伎ならいたいー?」と聞いたら「ならいたい!」と即答だったので、願書を出してみることに。書類審査だ面接だなんだで、スルッと入塾が決まった感じでしたが(全部旦那のヨッシーがやってくれていたからね…)
あとから聞いたところ、その年の倍率は10倍だったそうです。まず入れただけで、奇跡。
今はどうなってるかわかりません。
始業式で、見るからに賢そうな子達が並ぶ中(将来お札に描かれそうな顔の子とか)(先祖、大名でした?みたいなオーラ出ちゃってる子とか)
正直『何故この中にうちの子が…』状態で、まだ周りに比べて身長も豆粒のように小さかった半蔵を眺めていたのを覚えてます。
※ ちなみに『半蔵』も『染助』も私が勢いでつけた名前で、歌舞伎の家に由縁が…とか微塵もありません。我が家は一般家庭です。
そこからは、『学び』の一言では済まない
私たち親子にとって『大冒険』でした。
毎回、稽古着を着せるのも畳むのも一苦労。日本人なのに日本の文化に四苦八苦してる自分が情けない。
夏休みのワークショップで歌舞伎座の裏側を案内してもらった時は、驚きと感動の嵐で。見るもの全てになんだこれ!なんだこれ!って軽くパニックでした。笑
なんと、歌舞伎座の舞台の上にも立たせてもらって(有り難い事に親も一緒に立たせてもらいました☺️)
そこから観客席を見た時の感動ったら。
小さい半蔵の背中を見つめ、この子はこの景色に何を感じているだろう…。としみじみ思ったのを鮮明に覚えてます。いつかこの舞台に立ったりするのかな…?歌舞伎役者になるのかな?と、親の夢は勝手に膨らむばかりでした。
入塾して1年程経った頃、人見知りの私はやっと他の親御さんと会話するようになり。話す度に皆さんの歌舞伎への愛と知識量に度肝を抜かれます。正直、数人でしゃべってると会話についていけなくなり、途中から黙り込む事がしばしば。
自分なりに家で歌舞伎の本を読んでみたり、歌舞伎を観に行ってみたり!
…するものの、奥が深すぎて横も広すぎて到底知識が追いつきません。そして途中から色々諦め、自分なりの歌舞伎の楽しみ方を見つけます。
歌舞伎役者さんの顔も名前も無理には覚えない!観に行く時にはストーリーを事前に調べておいて、当日は解説イヤフォンを借りずに五感で存分に楽しむ、感じる!!!ただただ圧倒されよう、美しさに魅了されよう…!
そう割り切ってから、歌舞伎を観るのが益々楽しくなりました☺️
発表会もあったりして
それはそれは可愛かったです…!!
ただ習うだけかと思っていたら、次第に「寺子屋での学びを活かして、歌舞伎子役のオーディションを受けてみませんか?」というお誘いをいただくようになり、オーディションを受けるようになりました。
出れるかどうかはわからないけど、まずオーディションを受けれるだけで素晴らしい経験なので。(てか普通に育児してたら歌舞伎子役のオーディション受ける機会とか、ないし。)小学2年生くらいまでは、お誘いいただいたら全て行ってました。
物凄い緊張感、張り詰めた空気の中
最初は落ち着きもなく、言われたように声も出せず、よけいな事ばかりしていて。ガッカリして帰る…みたいな事の繰り返しでしたが。
回を重ねるごとにちゃんと成長し
小学生に上がる頃には3時間近くジッと正座し、先生の指導や出される課題に取り組むようになり。毎回、合否に関わらず一生懸命頑張ってる息子の姿が嬉しくて…!本当に本当にみんな頑張っていて、その場にいる子供全員毎回抱きしめたくなるくらい😭
一度だけ、ほんの一瞬の出番の役でしたが
舞台に立てる事が決まった時にはもうお祭り騒ぎで。まさかうちの子が!!!!状態。
詳しい事は書いていいのかわからないので自粛しますが。
一生忘れられない、1カ月半でした。
(一度舞台が決まると、お稽古から千秋楽まで1カ月半歌舞伎座に通う事になります。)
半蔵はもちろん、付添いしていた私にとっても物凄い経験でした。大人になって… というか主婦になって、こんな凄い勢いで何かを『学ぶ』機会はもうないかもしれない。
刺激に溢れた毎日でした。
半蔵を衣装さんのところに連れて行って着替を待っている間、太鼓の音を聞きながらいつも廊下に掛けてある着物を眺めては静かに感動していました。この着物に施されてる刺繍は、誰がどこで縫っているんだろう。そんな事を考えて、しばらくしてから日本刺繍教室の体験に行ったり。笑
月日は経ち、半蔵は歌舞伎以外にも色んな事に興味が芽生え。ロボット教室に行ったり野球を始めたり。四年生になったら勉強も本格的になってきて
半蔵と話し合い、歌舞伎は一旦ここでお終いにしようと決めました。
半蔵が歌舞伎役者になる事は、ないかもしれない。正直、今のところ。
でも、これから歌舞伎を観に行った時。あの舞台の袖の先を知っている半蔵は、人より何倍も歌舞伎を楽しめるんじゃないかな。ほんのちょっとの出番の人だって途方も無い努力をしていたり、その『ほんのちょっと』全てが舞台の大切なものだったり。
見えない部分で舞台を支えてる人達が何十人も、何百人もいること
そんな事をいつか考えてくれるかな。
学んだ数々を、ふと思い出してくれるかな。
あと、お稽古の度に先生方の素敵なお着物を拝見できるのも楽しみのひとつでした。私もいつか、サラリと着物を着て出かけられる女性になりたいなぁ…
しりとりしながら地下鉄に揺られ東銀座まで通ったことも。手を繋いで乗り換えの通路を歩いた事も。(そしてだんだん繋いでくれなくなった事も。笑)着物の丈を直すのが大変だった事も、練習に付き合ってたら私の方が見得をきるのが上手になっちゃった事も
些細なことまで、全てが
宝物のような思い出です。
もう、この先に入れないのかと思うと
ちょっと寂しいな。
これから益々グローバルな社会になって。そんな時代だからこそ『日本ってこんな国なんだよ』『こんな素晴らしい、面白い文化があるんだよ』って胸を張って海外の人と交流ができる大人になってほしい。
この五年半、半蔵の心に沢山の種を蒔いていただいたので。それにこれからもしっかりと水を撒き続けます☺️
その種がどんな花を咲かせるかは、今はまったくわからないけれど。それを魅力のひとつにして、豊かな交流ができる大人になってくれたら。そう思います。