NHK報道 ”バングラデシュ人質事件 武装グループは高学歴の若者か” の問題点

 ”バングラデシュ人質事件 武装グループは高学歴の若者か”( http://www3.nhk.or.jp/news/html/20160703/k10010581951000.html )と言う報道がNHKによって行われている。googleで「バングラデシュ人質事件 武装グループは高学歴の若者」を引いても、他にニュースサイトで該当するものが見当たらないので、NHKの独自記事と言うか、NHKの取材とNHKの観点からの報道だろう。

 内容について、問題だなと思うのは次の2点だ。

1.「今回の事件を巡っては、過激派組織IS=イスラミックステートのバングラデシュ支部を名乗る組織がインターネット上に犯行を認める声明を出していますが、信ぴょう性は確認されていません。」

 そもそも、インターネットに何らかの記事を出すとき、その出所は確認できる。今のシステムなら、どこの国のどこ地域のどのパソコンからの発信かまで特定ができるはずだ。もちろん、そういった検証を回避するソフトもあり、事態は複雑だが、そもそも、ISが自分たちのサイトを持っているのか、または、自分たち専用のIPアドレスを取得しているのか、そういったことが、多分、今までも検証されていないはずだ。そもそも、「信ぴょう性は確認されていません」という表現は、誰がそういった検証をしようとしたのかが不明だ。NHKは、本来自分たち自身でそういった検証が出来る立場にあるし、本来なら自分たちでそういった検証をやるべきだろう。他の報道でもそうだが、NHKは果たしてジャーナリズムとしての責務を果たしているのかどうか、疑問に感じることが非常に多い。更に、現状は単なる権力者の宣伝機関に堕しているのではと思えてしかたがない。日本国内の正当性がある権力の宣伝機関ならまだ分かるが、単にアメリカ軍産複合体の宣伝機関に、無意識のままなっているのではと思えてしかたがない。

2.「バングラデシュのカーン内相は3日、武装グループについて、ISとのつながりを否定したうえで、『全員がバングラデシュ人で、裕福な家庭の出身だった。大学に通うなど高度な教育を受けた若者だった』と明らかにしました」

 この部分も非常に違和感がある。社会の動きのどこに報道価値を見出すかはそれぞれの報道機関の判断であり、基本的にその選択がそれぞれの報道の価値を決める。社会をどう言った視点で、どのようにきり取って取り上げるかがジャーナリズムのだいご味だ。そして、NHKが今回の内容を取り上げたと言うことは、多分、二つの意味がある。一つは、NHKが「裕福な家庭」とか「高度な教育」に価値を見出しているということ。そして、もう一つは、「裕福な家庭の出身」で「高度な教育を受けた若者」がなぜ「武装グループ」になって、襲撃事件を起こし、「治安部隊に6人が射殺され、1人が拘束」されたかについての驚きだろう。しかし、この記事には、なぜ、こういった若者がテロに走ったかについての分析は全くない。それが問題だという姿勢がそもそもあるようには記事をいくら読んでも感じられない。記事には「裕福な家庭」と言う言葉が4回も出てきていて、却って、NHKが「裕福な家庭」と言うこと自体に価値を見出しているという印象を受ける。そして、「裕福な家庭」の意味は、「高度な教育」なのだと言っているように感じられてしまうのだ。

 しかし、本来、このニュースを取り上げるなら、別の視点からのはずだ。それは、なぜ、「バングラデシュのカーン内相」が、「武装グループについて、ISとのつながりを否定した」のかと言う点。そして、当然ながら、なぜ社会に対して不満があるはずがない「裕福な家庭」の「高度な教育」を受けた若者がテロに走ったかと言う点だ。

 分かるだろうか???つまり、今回のNHK報道の意味は、「裕福な家庭」の「高度な教育」を受けた若者が、何が何だかわからない動機でテロに走り、治安部隊に射殺されてしまっても、政府機関も報道機関も、それをそのまま特に調査もしないで認めてしまっているということなのだ。バングラディシュ政府は、ISとのつながりについて、調査をすることはできないだろう。当然、事件の背景について掘り下げることもできないはずだ。NHKもだ。

 とても皮肉なことに、この報道は、今のNHK自体がアメリカ軍産複合体の宣伝機関でしかなく、どの様な内容であっても、いかにも信頼性のある情報であるかのようにNHKが社会に発信してしまうことを表している。もちろん、こういった事態はNHKだけではなく、日本の多くのメディアが同じだ。それどころか、日本だけではなく、世界中のマスメディアが同じような状況にあると言っていい。

 そして、今回の記事は、まるで、「裕福な家庭」の「高度な教育」を受けてきたNHK記者がどんなでたらめの報道を流しても、それが問題化せず、しまいには、「治安」機関によって「射殺」されてしまう結末を迎えることを暗示しているようにさえ思える。

 こう考える根拠は前例があるからだ。リビアのカダフィ政権だ。カダフィ大佐は非常に善政を敷いていた。リビアの一般市民はかなり恵まれた生活を送っていた。わざわざ額に汗して働くことをしなくても、公務員に採用されるまではさまざまな失業手当を受けることで十分に豊かに生活が出来ていた。2011年の春までは。

 リビアの今は悲惨だ。リビア国民が地中海をボートで渡っているという報道はほとんど出てきていない。リビア市民以外のアフリカの人びとがリビアからボートでヨーロッパへ向かって脱出しているという報道だ。しかし、リビアが安全で豊かな社会であるなら、そもそもリビアから遭難の危険を冒してボートに乗って脱出を図るはずがない。つまり、それほど、今のリビアは情報が制限されていて、現地は混乱しているということだ。リビアがこうなってしまうまでにかかった期間は半年ほどでしかない。

 報道機関、特に日本に於いてのNHKの世論形成力は非常に大きい。つまり、リビアのように社会崩壊をしないために、本来NHKが果たすことが出来ることは大きいのだ。今回の報道をNHK職員の方たちはどう考えているのだろうか。

2016年07月04日05時35分 武田信弘 ジオログ(http//geocities.yahoo.co.jp/gl/taked4700)はヤフーブログ(http//blogs.yahoo.co.jp/taked4700)へ移行しました。CN:91055  SN:3782