更に、同じ震度であっても地震波の周期が短くなればそのガル値は大きくなり、周囲と比べて硬い地盤の上に造られている原発では短周期の地震波があまり減衰しないまま伝わるはず。だから、周期が0.1秒程度、またはそれよりも短い地震波で見ると、1000ガルを大きく超えている可能性もある。

 石を小さなハンマーで勢いよくたたいても石が壊れることは普通はない。それと同じで原子力発電所のような大きな鉄筋コンクリート造りの建造物に多少高周波、短周期の地震波が作用しても、作用する時間がごく短いのだから、蚊が刺すぐらいの影響しかないはずだと思えてくるかもしれない。

 しかし、1995年の阪神大震災では地面に打った鉄筋コンクリート製の杭で、しかもその上に何も荷重がかかっていない状態で、杭の一部、それも上端に近い部分に水平にひび割れが発生したという被害が複数見つかっている。この被害について、複数の専門家が、地震波、それも高周波の縦波の地震波が杭に入力して、杭の上端で反射した地震波とそれとは別の地震波が杭の内部で共鳴した結果、杭の上端から多少離れた部分で杭内部のエネルギーが大きくなりすぎてコンクリートにひびが入ったのではという論文を書かれている。

 この現象を多分典型的に表している被害がある。それは兵庫県にある西宮市立西宮高校の特別教室棟A棟での座屈被害だ。被害状況を示す写真が神戸大学の震災文庫で公開されている。
http://www.lib.kobe-u.ac.jp/directory/eqb/photo/kawase/Jap/index.html

 http://www.lib.kobe-u.ac.jp/directory/eqb/photo/kawase/Jap/Photo/PhotoV3063.html は地震後半年程度経過した10月に座屈した校舎を写したもの。5階建てで向かって左側が池を埋め立てた軟らかい地盤の上に建っていて、向かって右側が昔からの土地で硬い地盤の上に建設されていた。見て分かるように、1階が座屈したのは地盤が硬い部分。窓ガラスがかなり取り外されているが、座屈部分の上の2階から5階はそのまま残っていて、これらの窓ガラスは全く割れた形跡がない。また、取り外された窓ガラスもほとんど被害を受けていなかった様子だ。

 http://www.lib.kobe-u.ac.jp/directory/eqb/photo/kawase/Jap/Photo/PhotoV1037.html は座屈した部分とそうでない部分の1階部分とその手前のグランドを写したもの。座屈部分はぺちゃんこになっているが、その上にある2階の窓ガラスは全く割れていない。

 http://www.lib.kobe-u.ac.jp/directory/eqb/photo/kawase/Jap/Photo/PhotoV1021.html は座屈した部分を含んだ校舎3階から5階を写したもの。窓ガラスが無傷で残っていて、通常の横揺れがあったようには思えない。座屈した側、つまり向かって左側の校舎部分の窓ガラスも割れていない。

 http://www.lib.kobe-u.ac.jp/directory/eqb/photo/kawase/Jap/Photo/PhotoV1007.html はA棟の1階南東部分の写真だ。1階部分が完全にぺちゃんこになっているが、2階部分の壁が1階の土台部分の端にきれいに乗っかっていて、ほとんどずれていないことが分かる。つまり、だるま落としと同じで、1階部分がきれいにつぶれ、2階部分がすとんとほぼ垂直に落ちてきている。

 http://www.lib.kobe-u.ac.jp/directory/eqb/photo/kawase/Jap/Photo/PhotoV3012.html は座屈した1階のコンクリートの柱が完全に破壊され、中の鉄筋が飴のように曲がった部分を写したもの。コンクリートの柱は幅が1mもなく、横にずれた量は多分30cm程度もないことが分かる。