親米国家破壊

 かってイラクは親米国家だった。悪の権化とされたサダム・フセインはイラク国内でそれなりに善政をしいていた。ただ、彼個人が個人崇拝の対象とされ、絶対的な権力を持つように誘導されていった。絶対的な権力があれば、ほぼどんな人間であっても自分のやることに甘くなる。一般市民の立場から見たらとても許されないことを平気でやってしまうようになる。そうやって一般市民や国際世論からかい離する状況を作り出し、またはかい離していると見せかけて、その上で、その独裁者なり政権に対して非民主的だというレッテルを貼り攻撃をする。

 日本と同様親米国家だったサウジアラビアが今多少おかしくなっている。国内の政治腐敗を指摘する声が大きくなり、それに対する対処が迫られているが必ずしもうまくは行っていない様子だ(*1を参照)。サウジアラビアはスンニ派だが、同じくスンニ派のエジプトのムスリム同胞団をテロ集団と呼び、ムスリム同胞団寄りの報道を続けるアルジャジーラの支局をサウジアラビアから追い出し、アルジャジーラ向きに記事を書かないようにと国内のジャーナリストに指示を出したという。アルジャジーラ放送局をそもそも創設したカタールから外交団を引き上げると他の湾岸国と一緒にカタール当局に脅しをかけてもいる(*2を参照)。サウジアラビアがエジプトのムスリム同胞団をテロリストとみなしたことにインドのイスラム教大学が抗議をしている(*3を参照)。エジプトでは暫定軍事政権がムスリム同胞団が軍事部門を作ったと言ってイスラム同胞団によるテロを印象付けようとしている(*4を参照)。

 更に、サウジアラビアはUAEとバーレインと組んで、カタールに対し、ムスリム同胞団とのつながりを断つこと、アルジャジーラ放送局を廃止すること、及びカタール国内にあるアメリカのシンクタンクを閉鎖することを要求し、もしカタールが受け入れないのであれば陸上及び海上封鎖をすると言っている。(*5を参照)

 こういったサウジアラビアの危機感はエジプトでムバラク政権が倒されるときにアメリカがそれを黙認したことに始まっている。その後の総選挙で民主的に選ばれたムスリム同胞団出身のモルシ氏をエジプト軍が大統領の地位から追い出したときもアメリカ政府がそれを支持しなかったが、このこともサウジアラビア政府が危機感を強める一因になっている。(*6を参照)

 そのためか、サウジアラビアとUAEはエジプトの軍事政権を支えるために3兆円以上を既に使っているという。(*5を参照:Saudi Arabia and the UAE have spent $32bn supporting Egypt's military government post-Brotherhood.)ただ、この3兆円と言う金額はかなり大きな金額であり、自分としてはそんな多額な援助をしているのかと疑問に感じる。しかし、この援助がロシアとエジプト間の武器取引に使われているという報道もある(*6を参照:Saudi Arabia funded the Russian-Egyptian arms deal.)。

 サウジアラビアとイラクの関係もおかしくなっている。イラク首相のマリキ氏がサウジアラビアがテロリストへ資金援助をしていると非難をし、それに対して、サウジ側はマリキ氏はイラク国内の治安維持に失敗しているとやり返している。(*7を参照)

 湾岸協力会議(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B9%BE%E5%B2%B8%E5%8D%94%E5%8A%9B%E4%BC%9A%E8%AD%B0)を作っている6つの湾岸国は、サウジアラビアとバーレイン、UAEがイスラム同胞団を非難することで足並みをそろえ、カタールが擁護に回り、クエートとオマーンがどちらかというとカタールの肩を持つという様子だ。(*8を参照)

 ここまで見てきて気が付くのはイスラエルの動きが出てこないことだ。また、イスラエルともめているハマスの動きが出てきていない。ムスリム同胞団とハマスの結びつきがあるのは明らかで、今後ムスリム同胞団がテロリストとして攻撃されていけば、ハマスと一体化して行く可能性もある。

 ゼロの概念を最初に見つけたイスラムの人びと、イスラム金融という富の集中や蓄積を避ける仕組みを持った金融方式を編み出したイスラム教徒。石油や天然ガスを巡った争いが、イスラムの人びとの間に格差を作り出し、全体が内戦に向かいつつあるように見える。