今後10年程度の2020年までを考えても、中国の原発が地震により事故を起こし、福島第一原発事故での居住制限地域と帰宅困難地域に匹敵するほどの汚染を日本全国に及ぼす可能性が高い。

 つまり、1995年の阪神大震災を受けて日本国内で原発事故の懸念が高まったように、2008年の四川大地震を受けて、中国沿岸部の地震、特に、渤海湾付近での直下型地震で紅沿河原発が事故を起こすことが心配されてしかるべきなのだ。

 中国国内で当然こういった懸念はされているはずだが、日本から公的にこのことについての懸念を表明し、もし事故が起こった場合の措置をどうするか、その交渉を開始していなければならなかった。

 そして、現在の尖閣諸島をめぐる領土紛争は、中国と日本の政府間の話合い一般を困難にしていく可能性がある。そうなれば、中国での原発事故を想定した日中間の話合いはますます困難になるだろう。

 現実に中国で原発事故が起こり、日本がその被害を受けた時、日本政府はどうしようするだろうか。少なくとも、ほぼ日本全国が今の福島県の居住制限区域と同程度の汚染を受けることになる。そういう状況で居住を強制することはできないだろう。しかし、国内で移住をすることも困難だ。当然、海外移住をし、その補償を中国政府へ求めることになる。当然、中国政府もその交渉を拒否はできまい。しかし、チェルノブイリ事故でソ連政府は周辺国へほとんど補償をしていないはずだ。原発事故が起こったとき、その国際的な被害をどう補償するかは決まっていない。

 福島第一原発事故で大量の放射能が大気中や海洋へ放出されたが、国際的な被害についてその責任をだれがどうとるかは国際的にほとんど話されていない様子だ。このこと自体がとても異様なことに思える。原発が密集するアメリカ東部やフランスはほとんど地震が起こらない。しかし、中国はかなりの地震が起こるし、日本や台湾は地震頻発地域だ。

 本来なら1986年のチェルノブイリ原発事故を受けて、原発事故の国際的な補償について取り決めがされなければならなかった。それが、昨年の福島第一原発事故が起こったのちでさえ、いまだに国連の場で正式な議題とならないのだから、意識的に避けられていると考えざるを得ない。

 なぜか。それは、国際的な事故補償を考えたら原発の経済性が完全に否定されてしまうからだ。そして、そうなれば、発展途上国や地震頻発国での原発運転は中止されてしまうからだ。

 そして、もし地震頻発国や発展途上国での原発が運転停止になれば、こういった地域で原発事故は起こりえない。そして、このことは、アメリカやその他の原発を多数抱えている国々にとても不都合なことなのだ。理由は高レベル核廃棄物の処分問題だ。アメリカ基準では100万年の安全保管が義務付けられている高レベル核廃棄物は、現実的に言って地層処分ができない。何億年経っても重金属毒性が残るものを何万トンという単位で大陸には埋めることができないからだ。数万年の間には地下水がどう動くかわからず、更に地殻変動もかなりの程度で起こり得るから、放射性が数十万年は持続し、永遠に重金属毒性のあるものをたかだか1000メートル程度の浅い地下へ埋めるわけにはいかない。だから、大陸と地下水のつながりのない島嶼部へ埋めるしかなく、地震被害で自然に国土が汚染される島国を選んで原発を作らせる必要があった。

 島国で原発事故が起こり、居住が困難になれば海外移住をするしかない。大規模に移民を受け入れることができる国はあまり多くない。産業基盤が整っていないと仕事がないからだ。アメリカは条件が整っている数少ない国の一つだし、最も多数の避難民を受け入れることができるだろう。そして、最も多くの高レベル核廃棄物を抱えている国でもある。更に、アメリカは多くの米国債を海外へ売っている。原発事故が起こりアメリカ移住をせざるを得ない国がもし米国債を持っていたら、移民受け入れと交換条件にその米国債を安く買いたたくことも可能だろう。まして、アメリカは2008年のリーマンショック以来住宅不況が続いている。数十万から数百万人の規模で移民を受け入れれば、一気に住宅市況も上向くだろう。