地震衝撃波が日本の学界では無視されている。岩盤の上に建てられている原発は特に危険だ。
揺れの激しさと地盤の硬軟との関係は複雑だ。よく、地盤が軟らかいために揺れが大きいとされるが、これは地震のS波や表面波の影響を述べたものだ。地震によって発生する地震波には基本的にP波(縦波、振動が進行方向に起こるもの、音波と同じ)とS波(横波、振動が進行方向に対して直角に起こるもの)がある。P波は最初に発生する地震波で速度は速いが軟らかい地盤で減衰しやすい。S波は速度が遅いが減衰しにくく、比較的遠くまで揺れが伝わる。普通地震の揺れとして感じられるのはS波であり、S波が地表面を伝わる表面波というものも地震の揺れとして感じられることがある。日本は軟らかい地盤が多いので、よほど大きな地震で震源域の真上にいないとP波の揺れは感じないはずだ。緊急地震速報は、伝播速度の速いP波を計測して、本震であるS波の到来を予測するものだ。新幹線が地震で止まるのも最初に来る初期微動のP波を検知しているし、原発の制御棒が作動するのも同じ原理だ。
縦揺れも横揺れも、ほぼS波や表面波によって起こっている。S波が地表面にほぼ平行に来れば縦揺れになるし、垂直方向に近ければ横揺れになる。地盤の柔らかいところでは、こういった揺れがコップの中の水と同じで、揺れやすいし、その揺れが一定時間続くことになり、その結果、地震の揺れが激しいと感じられることになる。
ところが、地盤の固いところでは、地盤全体が固く接着されているため、横揺れするためには固い部分全体が動く必要があり、結果的に揺れが小さくなるし、そもそも揺れが持続しない。だから地盤が固いところは地震被害が少ないとされることが多い。しかし、ここには大きな誤解がある。つまり、P波は地盤が固い場合のほうが伝播しやすいのだ。地盤が固いところで、直下型の震源深さが比較的浅い地震が起こった場合、その震源域ではP波、つまり、地震縦波の影響を強く受けることになる。縦波は一般的に衝撃波とも言われ、ものを一瞬のうちに破壊してしまう。1995年の兵庫県南部地震(マグニチュード7.3、震源深さ16キロ、最大震度7)や2008年の宮城岩手内陸地震(マグニチュード7.2、震源深さ8キロ、最大震度6強)では、鉄筋鉄骨コンクリート製のビルや鉄橋の橋桁部分などで、地震衝撃波の影響がかなりの程度観察されている。その多くは、ビルの柱が粉々に粉砕されたり、鉄橋の橋桁部分に水平に割れが生じ、コンクリートが破壊され、鉄骨がくの字に折れ曲がるという被害だ。鋼鉄製の柱が途中で水平に破断する被害も出ている。最も特徴的に地震縦波の存在を示す被害は、場所打ちの杭(単に杭を地面に打ち込んだだけで、上部に何も乗っていないのもの、工事の途中という意味だ)で、杭の上部に水平にひび割れが見える被害が多く出たことだ。これは、横方向の揺れでは起こりえない。水平な揺れが作用すれば、杭に斜めのひび割れが入るという。
そして、ここが最も大きな問題だが、地震衝撃波の被害について、日本の学界や行政がそれを無視してしまっている。理由は、地震計に地震衝撃波を示す波の記録が残らないことだ。現行の地震計は一定程度以上の周波数の地震波は記録できないという。
しかし、地震衝撃波の存在を証明するのは簡単だ。地震縦波の存在を述べる論文とその存在を無視している論文を示し、無視している論文がいかに非論理的なものかを述べればいい。
地震衝撃波の存在を指摘する論文で公開されているものはほぼ大阪市立大学工学部の専門家によるものだ。1997年1月の工学部紀要震災特別号に掲載されている。そのうち主なもののタイトルを挙げると次のようになる。
1.「直下型地震による建造物の衝撃的破壊の特徴について」
2.「兵庫県南部地震における土木構造物の衝撃的破壊の事例」
3.「兵庫県南部地震における土木構造物の衝撃的破壊について - 地盤と構造物の相互作用の応力波伝播解析による検討」
4.衝撃的上下動による構造物被災
地震衝撃波の存在を無視するものには、次のものがある。
5.「兵庫県南部地震による市立西宮高校校舎の破壊機構」
これは、関西大学の専門家により書かれたものだ。
両者を比較するために、1.「直下型地震による建造物の衝撃的破壊の特徴について」 と5.「兵庫県南部地震による市立西宮高校校舎の破壊機構」に共通して取り上げられている西宮市立西宮高校校舎の破壊について、その分析の違いを見ることにする。これは、この高校の特別教室棟が固い地盤と軟らかい地盤にまたがって建てられていて、固い地盤の上の校舎部分の1階の柱が壊れてしまったという事例だ。柔らかい地盤の上の校舎部分はほとんど被害がない。