郵政株売却と国際決済通貨のバスケット制

 311の震災の復興財源として郵政株の民間への売却が検討されている。郵政改革法案の成立が必要だから、具体的に郵政改革法がどんな内容になるか、それ次第だが、幾つか危惧する点があるので、それを書いておきたい。

1.郵政株の売却は当然民間への売却となるはずだ。とすれば、現在のように郵政が国債を大量に保有することが出来なくなる可能性が高い。現在の国債保有残高は、ゆうちょ銀行預金残高174.7兆円のうち、84%の146.5兆円が国債。メガバンクの国債保有額は、三菱UFJFG44.9兆円、みずほFG30.5兆円、三井住友FG25.9兆円で、預金のうち30%~40%程度が国債だ。つまり、ゆうちょ銀行はメガバンクの2倍程度の比率で国債を保有していることになる。純粋に民営化すればメガバンクと同程度の国債保有率が求められるのは自然な流れだと思う。つまり、70兆円ほどの国債を売却する必要があるのだ。しかし、そんなにも巨額な国債の引受先があるだろうか?

2.現在、国際決済通貨をバスケット制にしようと言う案がでているようだ。ドルからユーロや円、そして中国の通貨である元なども入れて国際決済通貨を形成しようと言うことだ。具体的な案が決まっているわけではないので、こちらもかなりあいまいな話だが、背景にあるのは世界各国の国債が安全資産ではなくなり、リスク資産化すると言うことだろう。現在は、銀行が幾ら国債を保有しても自己資本比率の計算の時に、自己資本比率の値を悪化させない。つまり、国債はデフォルトの可能性がゼロ、保有リスクゼロで計算ができるからだ。しかし、ヨーロッパでの通貨危機やアメリカドルの崩壊危機など、先進各国で同時に通貨危機が表面化しつつある。ただ、これはある意味わざわざ通貨危機を演出している面がある。なぜなら、さっさとデフォルトしてIMF管理下にしてしまえばそれであとくされなく処理ができてしまうからだ。例えばアイスランドや韓国、アルゼンチンなどはそうやってきた。ギリシャとかスペイン、イタリアがなぜさっさとデフォルトしIMF管理下に入らないのか、ある意味非常に不自然なのだ。ユーロという共通通貨を形成していても、構成国が個別にIMF管理下に入ることは可能だ。現実に国の予算決算は個別の国でやっているのだから、その予算決算をIMFの指導下にやると言うだけの話だからだ。

3.もし、郵政株が民間に5割以上売却され、その後あまり時間を置かないで、国際的にBISの規制が変わり、国債がリスク資産化した場合、日本のメガバンクはどこも国債の保有率が大変高いので一瞬にどの金融機関も自己資本比率が悪化するはずだ。結果的に起こることは貸しはがしであり、一気に日本の景気は悪化するはずだ。その時、ゆうちょ銀行はどう振る舞うのだろうか?ゆうちょ銀行の現行の資金運用は民間への貸し出しはあまりない。だからこそ、80%以上が国債で運用されているのだ。だから、貸しはがしの影響はあまりないのかもしれない。しかし、自己資本比率の規制は国際的な企業活動にだけあるわけではなくて、国内営業にもBIS規制がある。つまり、自己資本比率が4%以上とされているのだ。日本国債にたいしてどの程度のリスク率が設定されるのかそれはまだ分からないから、4%を切るかどうかはまだ分からない。

4.しかし、日本の銀行に課せられるリスクは国債のリスク資産化だけではない。オペレーショナルリスクがあるからだ。犯罪やテロ、自然災害などで業務が継続できなるリスクのことで、日本の場合は地震や原発震災が大きな影響を与えるはずだ。つまり、日本の金融機関や大企業だけが大きなオペレーショナルリスクを背負わされる可能性は高い。そして、オペレーショナルリスクが大きくなれば、それだけ自己資本比率も低下する。

5.つまり、日本の金融機関だけが国際的に自己資本比率が極端に低下する事態になる可能性があるのだ。