ウランやプルトニウムのようなアルファ線を出す物質を肺に吸い込んだ場合、アルファ線を体外から計測するのは不可能だ。このことも、ヨウ素131による甲状腺癌のみが取り上げられ、ウランやプルトニウムによる発癌症例がないとされる一因であるはずだ。なお、半減期8日のヨウ素131による甲状腺がんの発症は20年ほど経過してからのことが多い。つまり、半減期が短いから影響も短期間で終わると言うことではない。(なお、ウランやプルトニウムの体内被曝を検知することが現在不可能であるわけではない。これらと同時に生成される放射性物質でガンマ線を出すものを検知することで、ウランやプルトニウムの体内被曝を推認することが出来ることはできるようだ。)
放射能汚染の恐ろしさは他にもある。一度環境中に出てしまうと、基本的にそれを回収することができず、また、汚染の影響が非常に長期間続くことだ。数十キロ四方へは簡単に広がってしまい、しかも数十年から数万年汚染の影響が残ってしまう。
地震頻発国である日本は54基もの原子炉をかかえている。東北地方太平洋沖地震はマグニチュード9.0の超大型地震であり、これによってフォッサマグナや中央構造線が刺激され、別の大型地震が誘発される。東海地震は既に150年以上起こっていず、明日起こっても不思議ではないと言われている。そしてその震源域の真上には浜岡原発がある。原発の廃止には時間がかかる。運転停止をしても安全でないことは今回の福島第一原発の事例で分かったはずだ。原発の廃止には10年単位の時間がかかるのだ。そして、南海、東南海、東海地震の同時発生は今後30年で50%程度はあるとされている。
原子力発電は非常にリスクが高く、しかも一度事故が起これば、原子力発電によって得ていた利益を数百倍数千倍という規模で上回る損害を与えることになる。車を利用することによって得る利益と自動車事故による損害を比べると、どんなに事故がひどくなろうが、利益のほうが上回るとほとんどの方が考えるだろう。しかし、原発事故の場合、大規模な放射性物質の吐き出しが起こってしまうと、一国の壊滅を意味するほどの損害を与えることになる。この意味で、原子力発電は経済的に合理的なものでは本来ない。
福島第一原発の事故が起こって既に20日以上が経過するが、原発全廃を言い出す政治家もマスコミもいない。しかし、人類にとって、原発は決してふさわしいものではない。ましてや、地震国日本にとり、これほど危険なものはない。全国の原発の即時停止を言いたいが、少なくとも、地熱発電を大規模に全国で進めるべきだ。
地熱発電のコストは非常に高く見積もられているようだが、そのほとんどは法規制や環境的な要因によるもので、規制緩和や開発の活発化がされればいっきに安くなるはずだ。地熱発電のいいところは、他の自然エネルギーが天気任せの面が強く、安定した発電ができないのに対し、一年365日24時間、安定した発電ができることだ。しかも、今後の技術開発の余地が多くあり、地域開発と一体となった地熱利用ができる。原発がその危険性から都市部には立地できず、かつ実際に事故ってしまったら非常に広範囲を居住できなくするほどの悪影響を与えるのに対し、地熱は、都市部に立地でき、その温熱を地域冷暖房に生かすこともでき、また、たとえ事故っても火災の危険性さえあまりない。
原発の即時廃止が電力供給の面や電力会社の財務の関係でできないと言うのなら、少なくとも、原発に代わるエネルギー源である地熱の開発を今すぐに進めるべきだ。地熱資源のトップ5国を見ても、日本以外はみな地熱開発を加速している。日本のみ地熱利用が後退しているのだ。原子力ルネッサンスを言い出したアメリカはその典型で、世界で最も地熱関係の投資が増加している。アメリカは口では原子力と言い、現実には地熱開発をやっているのだ。
*6月8日の記事「近づく戦争・テロ社会、これらの動きを止めるべきでは?」から一連番号を付しています。<<484>>