日奈久温泉は、
はっきり言って寂れまくってるんだけど、
哀しさは感じさせるところがないのが不思議。
そんなことを思いながら街を歩き、
寒さ避けるためにお茶したりして、
連休なのに静かな温泉街を探索した。
70年代の香りを色濃く残す喫茶店『ガロ」。
店内も昔ながらの喫茶店の風情だが、
食事メニューが充実しているところに
温泉街らしさがある。
店主は日奈久温泉が好景気なころを知っていて、
毎晩遅くまで観光客の列ができていたのだと。
どんだけにぎわってたんだか!
つか、そうとう儲かったに違いない。
そんな話をしていたら、ご主人はおもむろに
八代名物の「ばんぺいゆ」をむき始める。
ばんぺいつはスイカほどもありそうな、
柑橘類で世界一(日本一?)大きい品種。
なんでも、日奈久温泉では、
ばんぺいゆを使った料理やお菓子の
コンテストがあるそうで、
それに請われて試作中とのこと。
柑橘系の香りが店に充満し、
どんな味なのだか、気になって仕方ない。
そしたら、どさっとわけてくれた。
大きな見た目に似合わない、
優しい酸味と甘味がみずみずしくひろがる。
コーヒーもおいしかったけど、
初めてのばんぺいゆ体験は最高でした。
「ケント」のドアを開けてみた。
こちらは、コーヒー専門店の趣で、
オーダーを受けてから豆をひき、
サイフォンで淹れてくれる。
香りも味も上々で、
いろいろなことが懐かしく思い出されるような、
記憶に訴えかけるようなおいしさだった。
こちらのご主人も話好きで、
日奈久温泉の昔と今についての
忌憚なき意見をたくさん聞かせていただいた。
で、翌日も朝イチにうかがった。
すると、奥さんがやおら出してくれたのが、
のっぺ汁と漬物。
どちらも手作りだそうで、
味はもちろん、心遣いがありがたく、
寒い朝だったけどすごく暖かく感じられた。
しかしのっぺ汁って北国のものじゃ?
ま、うまかったからいいんだけど。
しかし、日奈久温泉ンってところは、
昔から多くの人を迎え入れてきただけあって、
店の人はみんな、人との距離感が近い。
いい意味で。
温かい人がいっぱいいるから、
たとえ観光が斜陽化してても、
街に哀しさがないのだろう。




