「鶴岡ホテル」と聞いて、オレは、
今どきのビジネスホテルを思い浮かべた。
しかし、さにあらず。
これが玄関を入ったところの、言わばロビー。
ホテルというのは名前だけで、
風呂なし食事つきの日本旅館なのだ。
しかも、非常に由緒ある。
「鶴岡ホテル」の常連客には、
原敬がいて、この部屋がお決まりだったとか。
庭を眺める広縁は、ちょっとホテルっぽいかも。
この部屋を愛した人に、
文学座の杉村春子もいたという。
鶴岡で公演があるときは決まってこの部屋を予約し、
足元が覚束ない年齢になって訪れた冬の雪の日でも、
他のホテルではなく、この部屋じゃなきゃ泊らないと、
だだをこねたのだとか。
戦後は米軍に接収された時期があり、
食堂は当時ダンスホールとして使用するため、
板張りにし、現在にいたっている。
春には敷地内の藤棚が盛りを迎えて、
見物客でにぎわうそうだから、
ぜひ相伴させてもらいたいものだ。




