さきおととしのこの時期、

和歌山県の龍神温泉への取材があった。

通常、カメラマンとふたりっきりってのが多いんだけど、

このときは被写体となる方がご一緒で、

ヘアメイクさんやスタイリストさんも加わり、
6人グループという人数になっていた。


以前、ファッションを担当してたときは、

そのくらいが普通だったんだけど、

人数が増えると、それなりに気を遣うもんだ。

旅程は一泊二日。

羽田から南紀白浜空港へ飛び、

レンタカーで龍神温泉を巡ることになっていた。

羽田空港での集合は、

さすがにみんな大人だし、慣れてるしで、

始まりは順調。


でも、その後が何か変。

スタッフ全員の航空券を

チケットレスで受け取ることにしたのに、
チェックインマシンの画面には、

「受付カウンターで承ります」と出てる。


何かトラブルでもあったのかな?
と、自分を責めてみたりして。


受付カウンターでは、
「この便は特別運行ですから、

搭乗25分前に必ず連絡バスに乗ってください。
遅れた場合は、キャンセルになります」と、

妙に厳しいことを言われる。

さらに空港内アナウンスで、
「南紀白浜空港が雨のため、

着陸不可能の場合は羽田に引き返します」。


え? 

天気予報は雨じゃないけど……。

以後、機内預け荷物の受付も、

搭乗ゲートでも、

やたらとチェックが厳しい。


搭乗口からバスに乗って飛行機に着くと、
カメラマンや記者たちがタラップ正面に並んでる。


なるほど、誰かセレブが同乗するんだ!


オレたち一般乗客は機体後方から搭乗。

なんか、肛門から入っていく感じ。


席についたらば、
オレは3人がけシートの通路側、

横には茶髪で派手めのご婦人がいて、
窓側にはその息子さんらしいガタイのいい若者。

前10列くらいまでの座席が空いていて、
そのうち、いかめしい雰囲気の男たちが、

ところどころを埋めていった。


おそらくSPだな。


それから少し間が空いて、

最後にやってきたのが、
皇位継承順位の筆頭にいる、

あのお方。


そう、プリンス・ナルは、

この上なく上品な身のこなしで現れ、

最前列のお席へ。


座る前に後方の客席を向いて一礼し、

お席につかれた。



なるほど、搭乗までのプロセスが

いつもと全然違ってたのは、

こういうわけだったのか。


おかげで離陸は、

これまでなかったほどスムーズ。

CAは皆ベテランを揃えていて、

機長のアナウンスもありえないくらい丁寧。


超セレブがいるとこんなに違うんだ……。



さて、隣の親子はというと、

離陸前からしゃべることしゃべること。


でも、お母さんはブランケットをもらうときや

機内サービスの際には必ず、

「前をごめんなさい」とおっしゃり、

CAへも気配りが感じられる。


親子ふたりで笑った後には、

「うるさくてごめんなさいね」と、
さり気なく上品におっしゃる。


隣に座ってても気持ちがいい。


南紀白浜空港が近づき、

着陸態勢に入ろうとしたところで、
「気象状況が思わしくないため、

着陸を見合わせます」と機長アナウンス。


それから、なんと約1時間以上も、

南紀白浜空港上空を旋回飛行。


その間も、機長やCA状況を逐一アナウンス。


宮様が乗ってるからな……。


上空で待たされてる間、

あまりにも暇だったもんで、
隣のご婦人とお話ししたらば――、
プリンスは病気のプリンセスの代理で、
那智勝浦で行われる赤十字の会合に出席し、

世界遺産の熊野古道を視察する、
2泊3日のスケジュールなのだとか。

何でそんなことをご存知かというと、
ご婦人もそれに参加するから。


実は最初からそうかな~と思ってたんだけど、
ご自分から某球団の監督夫人とおっしゃった。


ドアラの球団ね。


テレビのイメージと全然違うじゃん!!

(見た目はほぼ変わらないけど)


息子だって、あんまりな書き方されてるけど、

そんな感じは微塵もない。
挨拶も言葉遣いもちゃんとしてるし、

むしろ感じのいい青年だった。

そんなことから、

「今年も優勝されることを祈ってます」

と言ってしまったオレ……。

阪神ファンが魂を売った瞬間だ。

(この年はこっちが優勝したからよかったけど)


いや、そう言わせるくらい、

ご婦人とご子息の感じが良かったってことで。



考えたら、我がグループもセレブと一緒。

今回の被写体は作家を父に持ち、

ご自身も執筆や司会で活躍中の女性。


隣席のご婦人と、うちの有名人、
おふたりはやはり面識があったらしく、
機内預け荷物を引き取る場で、

挨拶を交わしておられた。


うちのセレブは非常にカジュアルな方で、
「『実際にお会いすると小柄なんですね』って言われたんだけどさ、
前にも会ってるのよね~(笑)」

どうも、かのご婦人は天然系らしい。



着陸後、空港の外に出たら、

日の丸の旗を持った人・人・人!

警備関係者も100人以上。
白バイやパトカー、黒塗りの車が何台もある。

道は封鎖され、一般車両は通れない。
だからレンタカーにもたどり着けない。


仕方ないから我々は空港の端っこに移動。

すると警備員が、

「その辺が一番いい場所だよ!」とニコリ。

いや別に、それが目的じゃないんだけど。


でも、実際に目の前を車が通り、

窓から手を振っておられるのを見ると、
こっちも自然に手を振っちゃった(笑)。


以下、レンタカー屋のおにいちゃんに聞いた話。


――この空港は地形的に難しいといわれとるんやけど、
この程度の天気やったら普通は降りてますよ。
下でみんな笑うてました。
なんでも、今日の機長は、

すごい優秀なベテランやったそうですね。
そやけど、この人、

南紀白浜に降りるのは初めてやったそうですわ(爆)

さすがにJALのやることは違う!!



しかし、おかげさまで、

非常に安全な飛行を体験できたよ。



でも、貴重な時間を2時間もロス。


龍神温泉に向かう車中は、

初対面にもかかわらず、

おかげで非常に盛り上がった。