温泉宿の取材を担当するようになって、
初めて仕事で訪れた"高級旅館"、
それが由布院「玉の湯」だった。
当日はある種の期待と緊張をもって臨んだけど、
緊張を強いられることは一切なく、
気持ちよく楽しく取材を進めることができた。
それはおそらく、
宿泊客に対するもてなしの気持ちと同じように、
自分たちを迎えてくれたからだろう。
ごく普通に、自然体で迎えられるってのは、
実は決して当たり前のことじゃない。
よりよく見せたいという気持ちはわかるけど、
雑誌用に特別のことをされても、
読者にとっていい情報にはならないからね。
その点、「玉の湯」は普段のまま、誇張や演出がなく、
ありのままの良さを感じることができて、
非常に心地よく過ごせたことが忘れられない。
先般、そんな「玉の湯」に再訪する機会を得た。
エントランスだけ見たら、
ここが旅館なのかどうかわからない。
そんなさりげない感じにまず和まされる。
背後を見ると雄大な由布岳。
自然に抱かれているような気持ちになる。
雑木林の庭の木はすっかり枯れているけれど、
地面にはちらほら花の色が見える。
目を凝らして見ると、クロッカスやスノードロップが咲いている。
冬枯れのシーズンも庭を楽しんでもらいたいという気持ちから、
西洋の花を植えてあるのだとか。
ふきのとうまであったのにはビックリ!
小径を通ってたどり着いたのは、食事処の入り口。
かすかに甘い香りがする。
木馬が置かれた廊下を通って、最初に案内されたのは暖炉のある談話室。
図書室を兼ねていて、テラス席もある、
自然と隣り合いながら、ゆったりのんびり寛げる空間だ。
フロントにも書庫のある談話室と、3月だからお雛様!
「由布院市」という名のおみやげ物コーナーは、
館内で使用されている器や工芸品、ドレッシングや菓子類が置かれていて、
まるでセレクトショップのよう!
この日は店頭でリンゴが売られていた。
おいしいものなら産地を問わないという、この宿のフレキシブルな面を垣間見た。
ティールームで出されているアップルパイは、
薄い生地にリンゴのスライスが並んだオリジナル。
以前もいただいたんだけど、これこそ旅館スイーツのNo.1!!
さらに、ここにはこしあんがたっぷり入ったアンパンがある。
これは別府のパン屋さんのもので、昔懐かしいというよりも和菓子のような品のよさ。
どちらも甲乙つけがたい!
大浴場には露天風呂がある。最近流行りの部屋付き露天風呂はないけれど、
そんなもの、温泉旅館にとって決して必要ではないと、
こちらにいると考えさせられる。
では、離れの部屋へ。
土壁に凹凸があるので近づいてみたら、木の葉の模様がつけてあった。
このセンス、絶妙!
格子戸ってのが、いかにも日本的。
なんだかいい香りがするな~~と思ってたら、
花瓶のスイセンの香りだった。
お香などもいいけれど、
花の匂いのほうが由布院らしい。
和室とベッドルームのほかに、AVルームもあった。
このベッドのマットレスがすごく気持ちよくて、不眠症気味のオレでも即眠りについたほど!
テラスにはテーブル&イスがあって、
部屋にいても、自然を身近に感じられる。
部屋風呂は露天ではないけど、
この通りの気持ちよさ。
アメニティやシャンプー、ソープまで、
いいモノがそろってるのは流石。
ランプシェードの網代や浴衣入れなど、地元の竹工芸がそこここに見られる。
多分、ランプシェードのアイディアは、こちらが先駆けだと思う。
このワッパも確か地元の工芸品。
緑茶とほうじ茶、それぞれに高品質。
テレビがふすまの中にあるのも秀逸。
LAN回線が各室にあるのも、
旅館ではなかなかないこと。
部屋に備え付けられたはがきは、
スタッフの手描きだとか。
細かいところまで気がききまくってて、
部屋にいても驚きっぱなし!!
夕食後は館内の「ニコルズ・バー」でグラッパ。
本格的なバーがあると一日の終わりが豊かに感じられる。
しかし、オレが感じた「玉の湯」の魅力は、
ちゃんと伝わってるだろうか?
さらに感激した食事は、次の日記で!