温泉半島と言ってもいいくらい、
たくさんの温泉郷がある伊豆半島。

一時期、停滞気味だった伊豆も、
離れで構成された宿「月のうさぎ」の登場以来、
同タイプの新しい温泉宿が次々に誕生。
特に東伊豆エリアにそんな宿が集中していて、
それなりに活況を呈している。

現在の主流となっている温泉宿の傾向は、
離れがあり、部屋には専用の露天風呂があり、
食事は「食事処」でいただくようになっていて、
中居さんなど宿のスタッフは最初の案内以外に部屋には来ない。

宿泊客のプライバシーを保ってくれていて、
居住性の良さを追求していると言えばいいだろうか。

南伊東駅のすぐ近くにある「淘心庵 米屋」も、
離れはないものの、同じようなテイストの宿だ。




こちらで人気があるのが、
この、半露天風呂付きの部屋。
確かに、部屋にこんな風呂があると、
いろんな意味で楽しめる。



お付き菓子は「栗きんつば」。
到着時に抹茶とともに供され、
お土産も承っている。
これ、美味かった。




大浴場は古代檜が用いられていて、
サウナや露天風呂も完備。
貸切風呂も気持ちがよかった。

で、風呂上りに用意されてるのが、

冷たい牛乳とコーヒー牛乳。
オレはこれを目当てに、風呂に入ってたりして……。


「淘心庵 米屋」は料亭旅館とうたっており、
料理にはかなり力が入っていた。

食前酒は伊豆らしく「蜜柑酒」

先付けは三種。


其の一 蛸の柔らか煮、のびる


其の二 林檎と菜の花、おろし掛け


其の三 伊勢海老、このわた和え

一度に三種出され、
献立に書かれた順番どおりにいただくと、
段々と盛り上がりを感じるような内容になっていた。

特に其の三がいい。
冬の伊豆といえば伊勢海老だが、
ひとひねり加えられたところに、
板場の気概を感じた。


椀物は「鯛の昆布巻」。
吸い口は、京都の割烹のような薄さぎりぎりでなく、
はっきりと旨みが立っている。
これもまた、食材豊富な伊豆に似合っている。

続く向付けも二種。


炙った河豚の身と白子。
薄造りよりも、厚めの方がやっぱ美味い!
焼き霜にすると、さらに味わいが深まる。
白子も見事なり。

当然、ここでお燗にチェンジ。


サザエ、赤貝、アワビの貝盛。

舟盛のようにドカンと刺身が並ぶのではなく、
厳選したものだけを出す、といったところか。
程よい量で多彩な味が楽しめた。


伊豆名物のワサビを自らおろすというのも、
イベント性があって楽しい。


焼物は真奈鰹の西京焼き。


煮物代わりとして、伊豆三味しゃぶしゃぶ。
魚は、金目鯛、黒むつ、平政。
お造りよりも実のあるメニューだ。

次は「和牛シチュー」か「和牛ステーキ」の二択。


迷った末にステーキを選ぶ。
アッサリしていて、多分正解。


箸休めとして、金胡麻豆腐。
暖かく香ばしい胡麻豆腐は出色の出来!

この後の口替りは以下5種類から選べる。
「新筍と蕗の土佐和え」「いもがら胡麻クリーム和え」
「寒鯖ぬた和え」「駿河湾とらふぐ唐揚」
「地魚のあら炊き」

ひとつしか選べないのかと思ったら、
いくつでもいいとのこと。

とは言っても腹に限界があり、
「いもがら」と「寒鯖」をお願いした。

「いもがら」は冷たくて歯ごたえがいい逸品。
「寒鯖」もまったりとしていてコクがあった。


しめの食事は竹の子ご飯。
ふんわりと春の香りが楽しめた。

ほかに、赤だしと漬物。




デザートはやはり伊豆らしく苺が中心。

最後まで起伏に富んだ献立で、
伊豆の豊かな食を教えられてような感じ。


こちらのサービスとして特筆すべきは、
夜10時からのラーメン。
味は昔風の中華そばで、
ちょっと小腹が空いたときのために、
量は通常の半分以下。
これが実にいいあんばいで、感心した。

ただ、食い気満々だったので、写真はナシ。


ついでに朝食も。

中でも心奪われたのが、金目鯛の一夜干し!


最近流行りの宿の傾向の中で、
客室に入ることを遠慮しプライバシーを保つというのも、
すべての用意がきちんとなされた部屋でないと成立しない。
その点で、この宿はちゃんとしていて、
何不自由なく、自由にのんびりすることができる。

食事は色々と工夫がなされていて面白いのだが、
二択や五択を食事の早い時期に迫られるのは「?」。
その時の腹具合や、味の流れで判断したいところだ。

板場の手間を考え、早く知りたいのはわかる。
だが、内容的にそう手間のかかるものとも思えず、
客よりも板場の意向が優先されていることを感じた。


こちらの宿のことではないが、
最近流行りの傾向というのは結局のところ、
人件費の削減のために考えられたシステムでしかない。

それをいかに感じさせず、
快適な時間を与えることができるかというのが、
宿の良し悪しにつながるのだ。


「淘心庵 米屋」は新傾向の宿の中でも、
かなり水準の高い部類に入る。

接客の面で改良の余地はあるものの、
現在の料金なら不満はない。


現代のニーズに合わせながら、
古きよき旅館のよさも味わえる、
それがこの宿の特徴だ。

「淘心庵 米屋」の詳しい内容は、こちらへ。