今日は珍しく、自分の仕事のことについて。
いわば、宣伝。
この度、某誌にて連載を担当していた企画が、
『日本の旅ごはん』という単行本として発売さた。
著者の向笠千恵子氏は、
ベストセラー『日本の朝ごはん』などの著書で知られる、
フードジャーナリスト・エッセイスト。
最近流行りのスローフードや安全な食に早くから注目し、
生産者の苦労まで丹念に取材してきた人。
彼女の取材姿勢は、食にまつわることを徹底的に掘り下げるスタイル。
だから、食の生産者や職人、器、民俗や歴史まできっちりと取材し、
土地に根付いた食の素晴しさを愛し、追求しておられる。
そんな著者と巡ったのは日本全国の「食の隠れ里」18カ所。
行程はおおよそ2万5千kmにも及びます。
それぞれの土地で向笠千恵子氏は、
面白いものを見つけると寝る間も惜しんで取材を敢行。
その熱意と努力があるからこそ、
各地がいかに豊かな食文化に彩られているのか、
それがいかに価値あるものなのか、
見事に浮き彫りにできるのだと思う。
また、各地で詠まれた俳句には、
彼女の優しさに満ちた感性も読み取れる。
この取材のおかげで自分は、利尻礼文、喜界島、
宮古八重山、西和賀、尾鷲、中土佐、下北半島などなど、
思いも寄らなかった土地に初めて足を踏み入れることができた。
それぞれの地で自分が感じたことは、
昔ながらの文化や人情が今でもちゃんと受け継がれていること。
そして、風光明媚な景色や個性的な郷土料理の裏側には、
伝統を守り未来を見据えている生産者の存在があった。
そんな人々が頑張ってくれているからこそ、
豊かな食文化が継承されてきたのだ。
この本の旅には、金銭的な意味での贅沢さがあるわけではない。
しかし、どんなにお金を積んでも得ることのできない心の豊かさが
そこここにあふれている。
現代の食のあり方に疑問を持っている人や、
これまでとは違う旅をしたいと望んでいる人には、
ぜひ読んでいただきたい一冊だ。
平成 食の風土記『日本の旅ごはん』
著者・向笠千恵子(小学館) ¥1,500+税
この連載を担当したことで、
普通の旅行では訪れることはなかったであろう土地を知り、
向笠さんとご一緒させていただいたことで、
生産者や風土から食を考えるという観点をもつことができた。
そんな感謝を込めて。