仕事として女性アイドルしか担当したことがないので、男性アイドルに関しては無知に近い。というかそもそも関心がない。なので、女性ファンの行動など知る由もなかった。
今まで不思議でならなかったのが、男性アイドルのコンサートに出かける女性ファンが、必ずお手製のうちわを持って行くこと。そのうちわには個人の願望が書かれている。
「○○くん大好き」は個人の応援する気持ち。「抱きしめて」は敵わぬ願望のアピール。まぁ、ここまでのファン心理は理解できるが、なかにはこんなのがある。
「こっち向いて」「見えたら指さして」「見えたらバーンして」「投げCHUして」「ないしょポーズして」「キュンして」「ピースして」「ジャンケンして」等々。
内容を見るたびに絶対無理だろうと思っていた。何を夢物語的なことを書いているのかと思った。
考えてみてもやるだけ無駄なはず。大多数が詰めかけるコンサート会場において、アイドルが一個人の小さなうちわを見つけて希望を叶えるなど無理だからだ。踊り歌いながら、一個人に向かって応えてやることは無理だからだ。そう思っていた。
だが、実際やってくれるという。アイドルがステージ上でうちわを目にすると、そのファンに向かってうちわに書かれた願望に応えてやるのである。もちろん全員には無理だ。だが、運よく応えてもらえたファンは堪らない。ますます熱狂的なファンになっていく。
まさにファンサービスという名の売れるための戦略。
これがアイドルではない純粋な歌手のコンサートなら有り得ない。うちわを掲げても応えてもらえない。売れていない歌手か、貴重なファンを大事にする歌手を除けば。
推し活に励む女性ファン達は、そんな宝くじ的な希望を抱いて手作りうちわを持参していたのである。なんと健気なことだ。うちわには夢が込められているのだなと初めて知った。
[編集後記]
微かな夢に希望を抱く女性ファン独特の気質といったところか…。