取材でお世話になっている歯科医がいる。歯科業界の裏話や真相を聞かせてくれる貴重な情報源になっている先生だ。(テーマ「歯科の話」シリーズ1~7に記事掲載)
そのつながりからここ10年は患者としてお世話になっている。医院は下町の人通りの少ないマンションの一階にてひっそりと開業中。自由診療なので完全予約制、助手はおらず先生一人でやっている。腕は確かなので、自宅から片道1時間半かけて治療を受けに行っている。
先日、開院時間のお昼12時半に行った。その時間に予約していたからだ。だが、医院は閉まったまま。先生がまだ来ていないのだ。時々こういうことがある。悪気なく遅刻して患者を待たせるのだ。以前Wブッキングされたこともある。腕が確かでなければ信用問題だ。
で、久々に行って医院の前で待っていたところ、玄関に先生と三笘薫選手のツーショット写真が掲げてあった。つまり『世界の三笘』がこの医院を利用していますよという宣伝みたいなもんだ。
先生が遅刻して来るまでの5分間、玄関の前で待っていた。そこで気づいたのは、医院の前を通る数人がこの写真を見ていったん足を止めていたことだ。やはりすごい宣伝効果になっている。『世界の三笘』が通う隠れた名医のいる歯科医院!といったところか。
治療中、こちらが聞くよりも先に先生の方から三笘選手の話が出てきた。先生もミーハーなところがあり、やはり自慢したいのだろう。…というか、誰かに話したいという気持ちはすごく分かる。
三笘選手が来院したのは、先生の知人の紹介でマウスピースを特注するためだったらしい。私も先生に作ってもらっているが、ただ作るだけならどの歯科医でもできる。おそらく的確なアドバイスなど細かいケアをしてくれるところが信頼されているのだろう。
三笘選手の奥さんも来たことがあり、名前が三笘クリアというのでハーフなのかと思ったら純粋な日本人なのだという。クリアさんは三段跳びの陸上選手。高校時代には日本一になったこともあるという。父親が110メートルハードルの元陸上選手で、記録をクリアするスポーツ選手になって欲しいという願いを込めてクリアという名前にしたらしい。先生からはそんな裏話も聞かせてもらった。
三笘選手が来る日、先生は自分の奥さんと5歳になる息子を医院に呼び寄せた。喜ぶと思ったからだ。しかし、奥さんはサッカーに興味がないので反応はイマイチ。息子は全く関心がなく、一緒に写真を撮ろうとしても嬉しがらなかった。むしろ、父親の面子を立ててやるために仕方なく応じてやったという感じだったらしい。三笘ファンからすればなんという罰当たりな態度だと激怒されそうだ。
猫に小判状態の息子は、いつこのツーショット写真の価値に気づくのだろうか?
私はサッカーファンではない。生粋のプロレス派だ。それでもニュースは見るので三笘選手のすごさは知っている。だから、先生の医院に三笘選手が来ていると知った時は「すげぇ!」と思ったものだ。だが、先生の奥さんや息子のような無関心もいる。
私も知り合いに自慢したく「通ってる歯科医院に三笘選手も来てる」と話したところ、男性陣は驚くが、スポーツに興味のない女性陣は「ふ~ん」ですまされてしまった。年配女性などは「誰それ?」と言う始末…。
いくら『世界の三笘』と言われても、すべての日本人が認知しているわけではないということを思い知らされた。
会計中、イギリスにいる三笘選手から先生にメールが届いた。マウスピースのことでなにやら相談があるらしかった。それを見ながら嬉しそうに話をする先生。ま、本人が嬉しければそれでいっか。
[編集後記]
猪木信者にとって、猪木にビンタされることは宗教儀式のようなもの。「俺もビンタされたい」と言うと、たいていの女性から「バカじゃないの」と言われたものだ。