浅草小学生時代:
【学校の13階段】
『学校の怪談』の中でもよく聞かれるのが『校舎にある階段の不思議』ですよね。
「13段ある階段では怪我人が続出する」とか「階段数が日によって増えたり減ったりする」というものです。私の小学校では増減する現象がしばしば起きていました。噂の階段は特定されていて、そこは通常12段なのに、時々13段になるという噂が伝えられていました。本当かどうか疑わしいので、私はいつも数えながら昇り降りしていました。
「1、2、3、4……」
すると、やっぱり「13」と数えてしまうことが時々あるのです。「あれ?」と思い、今度は強く意識しながらゆっくり数えていくと「12」。友だちと一緒に数えたこともありますが、その時も「12」。でも、一人で気軽に数えながらだと「13」だったりするんです。その時は不思議だなとは思いましたが、怖いという感じはありませんでした。あのような出来事が起こるまでは……。
その日、私は例の階段を友だちとふざけながら降りていました。その時、なにかに足を引っかけたらしく、踏板を踏み外し転んでしまいました。幸い踊り場に近かったので、擦り傷だけですんだのですが……。
階段を見てみましたが、足を引っかけるようなものは何一つありません。なんだか嫌な予感がし、ひょっとしたらと思い階段を数えてみると……
「1、2、3……10、11、12……13!」
うそっ! 目を凝らし、もう一度数え直してみました。
でも、今度は12でした。
「そうよね。ただの思い過ごしよ」
その日は自分にそう言い聞かせて終わったのです。
それからしばらく経ったある日のこと。早歩きで行く友だちを追いかけて階段を昇っている時のことでした。目線の先にある友だちの足が目に入った時、なにやら薄い手の形をした薄いもやみたいなものが伸び、友だちの足首をつかんだように見えたのです。咄嗟に……
「危ない!」
そう叫んだ時には、友だちはつんのめるように倒れ、顔面を強打して鼻から血を出していました。まさかと思い、すぐに階段を数えてみると……13段でした……。
友だちを連れて保健室に行きました。
「また、あの階段で怪我?」
保健の先生は呆れたような顔で言いました。
「またってどういうことですか?」
すかさず質問する私に、先生は教えてくれました。過去に同じ場所で何人も怪我をしていることを。捻挫する子もいれば、一番酷い時は靱帯損傷を負った子もいたそうです。
そこで私は気づきました。気を許した時やふざけている時に、あの階段は13段になり、その瞬間に霊界と繋がり怪我をさせられるのだと。確証はありません。でも、そうとしか考えられないのです。
担任の先生が心配して保健室にやって来ました。
「いったいなにがあったんだ?」
駆け上がったと言えば怒られるに決まってます。かと言って、踏板から手が伸びて足をつかんだと言ったところで信じてもらえません。むしろ、ふざけるなと怒鳴られるのがオチです。仕方なく黙っているしかありませんでした。
以後、『13階段』についての噂は絶えることがありません。
男子が飛び降りたら捻挫したという事故もありました。でも、2~3段を飛び越えただけなので、ヤンチャな男子がそれくらいで怪我をするとは思えません。これもきっと13段になった時なのかもしれません。
数えながら昇った女子がいました。13段あることに気づいたとたん、嗚咽しめまいを起こして倒れたそうです。
それからというもの怖くなった私はあの階段を避けるようになりました。避難訓練や集団移動の時しか使いません。そして、その時はいつも段数を数えています。一度だけ人間の顔のように見えるシミが笑ったように見える時もありますが、その時は13段でした。やっぱりあの階段は……。
友だちが怪我をして以降、階段には『ふざけないように! 駆け上がったり駆け下りたりしないように!』という張り紙がされるようになりました。でも、そんなことをしても無駄です。13段になる時はなるんですから。そうなったらもう覚悟するしかないのかもしれません。