美容用語にリフトアップという言葉がある。加齢による頬のたるみをなくし、ほうれい線をなくすために、顔の筋肉を鍛えて重力に耐えようというものだ。これにより少しでも若々しく見せることができる。
だから女性は必死になって、美顔器なるものを顔に当てて筋肉を鍛えようとする。刺激を当てることにより筋肉は強化され、若い子みたいなハリのある表情筋に近づけることができるというわけだ。
効果のほどはどうか? 美容関係の取材をしている時に、美顔器を使って実際にリフトアップされて頬がすっきり見えたり、中にはほうれい線が短くなる人を多く見た。50歳の女性で、ほうれい線が消えたのを間近で見た時は、同一人物とは思えないほど若々しさが蘇っていた。
ただし、その効果は持続するわけではないので、やはり毎日やらなければならない。1日に何回もやってもおかしいことではない。要は表情筋を鍛え続けることが大事なのである。
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知人にアラフォーの女性編集者がいる。彼女は実年齢より若く見え、そこそこの美人だ。しかし、リフトアップさせるためのエステをしていない。若々しく見えるから必要ないと考えているのだろう。私も若々しい彼女にはその必要がないと思っていた。
しかし、ある日彼女が足の怪我で入院し、見舞い行った時のことだ。ソファーで横になっている時の顔を見てふと思った。いつもと顔が違って見えるのだ。いつもより綺麗に見えるのである。そして、起き上がった時、いつもの見慣れた顔に戻った…。
理由が分かった。寝ている時は顔全体の筋肉が左右に伸びてベッド方向に下がり、起きている時は頬の筋肉が顎の方向に下がっていたからだ。ほんの微妙な動きなのだが、ほんの少しの筋肉の緩みが彼女の表情を違うように見せていたのである。
ただでさえ美しい彼女だが、寝ている方がさらに美しいとは…。ということは、表情筋を鍛えれば今以上の美人になるということか?
リフトアップの必要性を知っていた私は、失礼だと思ったが何でも話せる間柄なので、彼女にこのことを話してみた。すると彼女は、思い当たる節があるという。
それは夫とセックスをしている時だった。騎乗位から上体を前に少し倒し顔を近づけた時、夫が「なんか顔がいつもと違う」と言ったのである。どう違うのかを聞いてみたところ、少し不細工になったと言うのだ。
その時彼女は、髪が垂れて影ができたために顔が暗くなった影響だと思い、気に留めていなかった。だが、そうではなかったのだ。顔の緩んだ筋肉が重力で引っ張られいつもと違う顔になってしまったのだ。しかも、不細工と思われるほどに…。
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若々しさを維持するために、いかに表情筋を鍛える必要性があるのかを改めて思い知った。これは美しさを求める女性だけの問題ではない。男性にも必要なことだ。
いくら中年でイケメンと言っても、セックス時に正常位で上になっていることが多い男性は、常に顔の筋肉が下がっている状態を見られているというわけだ。たいていの女性は行為中に目をつぶっているから気づかないだけで、目を開けられればいつもより老けた顔を見られることになるのである。これではイケメン中年も台無しだ。
男性は体の筋肉を鍛えたがるが、若々しさを維持したければ顔の筋肉も鍛える必要がある。エステに行くのが恥ずかしければ、自宅で美顔器を使うという手もある。
美顔器については、効果のほどはマチマチでどれが良いとは言えないが、何もやらないよりはマシだろう。安物よりは高価な方が良いのかもしれないが。
奥さんが高い美顔器を買うことに難色を示す夫が多いが、それはリフトアップ効果の真実を知らないからだ。自分の妻が若々しく美しくなることに異議を唱える夫などいない。だからこそ、どんなに高くても購入には理解を示すべきだ。そして、自分も使えばいいのである。
誤解して欲しくないのは、美顔器さえ使えば必ずしも結果が出るというわけではない。普段の食生活に気を遣い、運動もしてストレスを溜めないことも大切だ。そして、美容液でのケアも欠かしてはならない。
やはり年齢を重ねたら、女も男も顔の筋肉は鍛える必要がある。いつまでも若々しくありたいと望むのなら。
[編集後記]
美顔器の説明に「リフトアップの効果がある」と書かれていないから偽物だと決めつけてはいけない。「薬機法」という法律で、美容系は体の変化を謳うような「リフトアップ」という単語が使用できないだけなのである。サプリメントで効果があっても効果を謳えないのと同じだ。