ゲームをしていることを知っていた子どもに、「あのゲーム、クリアしたよ、あやうく泣きそうになった」と報告。

 

そういうたぐいのゲーム。

 

 

ゲーム内容は、ステージクリア制の、アクション、というよりパズル・アクション。

 

ライフもなければ、アイテムもなし。

 

スキル要素もほとんどなく、成長要素は皆無。

 

というか、アクションを楽しませるためのゲームでは、おそらくない。

 

ストーリー9割、ゲーム性1割。

 

ゲームを楽しもうと思うのなら、手をつけてはいけないゲーム。

 

個人的には、この割り切りが非常に心地良かった。

 

ゲーム性もストーリーも両方楽しんで、だと破綻すると思っている。

 

そういった意味では、ストーリーに全振りしているのは、非常に好感がもてる。

 

クリア時間は4時間。

 

 

パズルといっても、プレイ時間を引き延ばすための、無理矢理の謎解きはなし。

 

やられても直前に戻れる。

 

Trial and Errorの部分はあるけれど、それほど多くないし、繰り返しの数も少ない。

 

誰がやっても、4時間程度でクリアできるはず。

 

そういうゲーム設計なんだと思う。

 

プレイ環境は、序盤はPS Portal、中盤以降はテレビでプレイ。

 

おそらく、携帯機でプレイされるということを考えて、キャラクターは大きめにつくられている。

 

表情がポイントになるから。

 

それでもテレビでプレイするのをオススメする。

 

動かすのは、姫(狼)。

 

ICOよろしく、王子と手を繋いで、ゲームを進める。

 

 

上のキャプチャのように、普段は素の顔の二人。

 

それが手を繋ぐと、二人ともニコッと微笑む。

 

これが実に良い。

 

おそらくは作者さんはICOに影響を受けたのだと思うけれど、きちんと表情をもたせたのが良い。

 

キャプチャしたつもりが、キャプチャできておらず。

 

もうゲームを削除したので、再キャプチャができないのはあしからず。

 

姫はどこでも狼に変身できる。

 

 

狼は無敵、姫と王子は一撃でアウト。

 

キャラクターのサイズも意味がある。

 

大きいと通れない通路があるし、重いと崩れる床がある。

 

狼は姫のサイズの2倍。

 

そこら辺を考えてパズルに挑む。

 

そして、ときには、王子を遠隔操作して、床ボタンを踏んで、という王道のパズルが用意されている。

 

とはいえ、先にも述べたけど、それほどパズルや謎解きは難しくない。

 

そうこうしているうちにエンディングを迎える。

 

おそらく、老若男女、ある程度のゲーマーであれば、必ずエンディングを迎えられる。

 

そういうゲームなのだと思う。

 

日常が忙しいな、ちょっとゲームをしてサクッとクリアしたいな、という人にぜひともプレイして欲しい。

 

エンディングやその後のエピローグに納得がいかなくても、無駄になるのはせいぜい4時間。

 

許せる範囲では?

 

自分は、PS+でプレイ。

 

さすがにこれを定価の5,000円強で買うことはオススメしないけれど、PS+でダウンロードしてプレイする価値はあると思う。

 

 

さて、ここからは、エピローグについてネタバレ考察。

 

これからプレイしようと思う人は、プレイした後に読んで欲しい。

 

 

 

 

 

 

 

 

まず、自分の立場をハッキリとしておくと、エピローグの内容は肯定派。

 

エンディングで、王子の記憶を奪われ、キレイな歌声も戻らない狼。

 

王子の視力だけが回復するという、自己犠牲の賜。

 

それでも、下手くそな歌を、夜な夜な月に向かって歌う狼。

 

てっきり王子は、その下手くそな歌を、そっと聴き続けて、拍手を送るのかな、と思っていた。

 

ところが、その王子。

 

何を思ってか、人喰いである狼に会いに行く。

 

そして、記憶を奪われた狼は王子を手にかけようとする。

 

しかし、王子は狼に花束を渡す。

 

あなたがしてくれたことを、私がお礼にするんだよ、と。

 

ゲーム中に姫が王子に花を渡すのだけれど、その伏線の回収。

 

狼は、記憶が戻らねど、ポッカリと空いた心の穴が満たされた気持ちになり号泣。

 

ここでプレイヤーもグッとくる。狼といっしょに号泣したくなる。

 

狼に100%感情移入しているから。

 

これがラストシーン。

 

その後、タイトルが、一人で歌っていた狼から、下手くそな歌を謳う狼とそこに寄り添う王子に変わる。

 

大事なものを失ったけれど、結果として別の大事なものを得た、というのは誰にでも経験のあることだと思う。

 

というか、人生なんて、その繰り返し。

 

ゲームだって、昔あれだけ面白かったゲームが今では面白くなく、代わりに別のゲームを楽しいと思う。

 

それが成長かどうかはわからないけれど、知識・経験が身に付いて、更新されて、別の自分になるのは仕方がないこと。

 

そのことを言いたいだけのゲームなのだけれど、それを言ったら身も蓋もないだろうか。

 

さて、王子のとった行動。

 

狼に殺されるかもわからないのに、狼に会いに行く。この行動は是か、否か。

 

崖を登る王子の絵を見ていたときは、いやいやいや、それはないだろう、と思っていた。

 

でも、花束を渡す王子をみて、そうか、これは殺されても仕方がないと思ってしたことか、と思った。

 

だから、狼が王子を殺そうというシーンがあったのだと思う。

 

記憶がなくても、はじめに王子のことに気をかけたのは狼。

 

王子に花を渡そうと思ったのも狼。

 

一方的な思いは、狼にこそあった。

 

狼が王子に渡される花束をみて、号泣するのは必然。

 

王子がそれをわかっていたのかどうかは、もはやどうでも良い。

 

こういう伏線がすべて、エピローグで回収される。

 

見事だと思うし、クリア時間が4時間という短いながらも評価が高い理由がわかった。

 

紛れもない、名作。

 

仕事に、子育てに、人間関係に疲れている中年には、ぜひともプレイして欲しい。