われら「老々防災団」されど1年生で今からスタート 2020年6月15日発信

みんなの防災団みんなの防災団 コロナ災禍で人と人が距離を保つ、いわゆるソーシャルディスタンス「新しい生活スタイル」が提唱されている。
 しかし満員電車、すし詰め集会は当然だとしても、熱気が”かなめ”のスポーツ応援、祭り、ライブ・・・果たして肌と肌が触れ合うことが重要なコミュニケーションに変わるものがあるだろうか。
 「防災」もその一つ、遊びや祭事とは別だが、非常時に互いが体を惜しまず助け合う、ディスタンスを考えている場合ではなくなる。 どこかでどちらかを優先する割り切りが求められている。

 日曜の午後、建部町福渡地区で行われた「福渡みんなの防災団」のオリエンテーション。
 一昨年の豪雨災害を経て岡山市が100%実施を目指して取り組む地域の自主防災組織の結成、その一環で当町内にも今年の1月に町内会を主体に登録がなされ活動が始まった。と言っても、課題は山積。
 そもそもの課題は過疎高齢化。日中、老人しかいない町内で、どうやって組織を立てるか。 当然、構成人員は年寄り(記者も)、それを動くこともしんどい人たちを対象にいかに安全な避難に導くか。
 行政側は「地域に従来からある、住民同士の結束を図ってきた町内会が最もふさわしい」と期待。しかしそれが、当地域に於いて言えば岡山市に合併後、その結束がほぼ有名無実になってしまった感がある。
 これまでは町役場の協力できめ細かな活動を担ってきた町内会が、今は回覧板を回す程度の役割りでしかなく、 そもそも町内会の世話をする人さえ見つからないのが現状。

みんなの防災団みんなの防災団 福渡地区では一昨年の豪雨を経験し、指定された福渡小学校避難所までの道路の冠水や遠距離移動の困難さを考え、土砂災害警報時にも使用できる避難所(福渡町内の公民館、支所、保健センター、葵の園等施設は土砂災害危険地区のため使用できない)の選定が望まれていた。
 この日は心よく避難所を提供をして下さることになった「友愛の丘・ゼンセン」に新防災団員15名が集合、現地視察をすることになった。 利用するスクラムホールは全面フローリングの 体育館みたいな広々とした建物、団員らは避難時の行動を念頭に「駐車場」「出入口」「トイレ」などを確認する。
 「外の駐車場は3か所あるが、その位置と収容数をあらかじめ伝える必要があるのでは」
 「もし停電になり、トイレが使えない可能性が出た場合どう対処するか」

 団員の問いかけが発せられる。

みんなの防災団 一行は続いて町内にある自主避難所のコミュニティセンターへ移動。ここは一昨年7月の大雨の時にも使われた。
 ここでの課題はやはり収容人数に限りがあること、あぶれた人たちを先の「友愛の丘」へいかにスムーズに誘導できるか心配がつのる。
 そしてこの時点での大きな課題、それは土砂災害における避難開始をどこで見極めるか。丁度、この日の前夜、岡山市は全域に土砂災害警報レベル3相当を発令、しかし、これまでの雨量を推り、またこの後の雨雲の動きを追うと避難迄には至らないのではと多くの人が判断したのではないだろうか。逆に暗くなってからの避難の危険が高く感じられた。
 市の警報が最も頼れる指針であることは変わりない。それでも雨量、川の水量は即行動に結びつくのだが、土砂災害においては危険の見極めが難しい。確かにレベル3、レベル4の行動基準は確立しているのだが、今後、警報を受けての地元の”読み”が重要になってくる。そうでないとこれから何度も避難所を開設することになるやも知れず、 「それに常に対処する人員がどこにいるのか」根本的、壁にぶつかる。
 何度も言うが中山間地域における防災は今や「老労防災」が現実、これでいかに乗り切るかが問われている。  

(取材・三宅優 写真・松下泰成)