来年の子どもたちの歓声を夢見て「魚とり」 2020年5月9日発信

魚とり魚とり いくつかの県で緩和が出はじめた週末、建部平野では、土をかく耕運機の唸りが響き黙々と田植えの準備をする人たちの姿が目に付く。
 農作物はウイルスの影響で遅らせるわけにはいかない。
 春に耕し水を引き、苗を植えて秋の収穫を待つ、何千年と繰り返して来た人の営み。
 今日、ここ品田地区にある「一ノ口井堰」の用水の取り入れ口でも、水利の責任者の人らが集まり水門を閉じる作業に入った。
 用水を干し、明日から水路に溜まった土砂やゴミを取りのぞき、これから秋までの水の流れを確保する。 これもおそらく数百年は続けられた行いだろう。
 そしてこのタイミングに、旭川の生き物を捕え触れ合おうという岡山市環境学習センター「めだかの学校」主催の企画が始まったのがほぼ10年前。 記者も発起人の井口松治さんの呼びかけで参加して来た。

魚とり魚とり これまでに幾度となく大捕り物が繰り広げられてきた。
 ただ今年だけは、街中からの水路を埋める家族連れもなく、子どもらの歓声も聞こえない、自粛で中止となったから。とは言え、昨年仕掛けた簗は一度、陸に上げねばならず、となれば魚の顔も観て見たい。
 子ども心を捨てられない大人たち数人による「魚とり」の始まり。
 開始と同時に乗りつけたのは「アスエコ」メンバーで昨年も講師として来てくれた柏さん。
 「いやあ、こんな中ですけど、ここの魚とりだけは、やるだろうなあって思って来ました(笑)」
 さすが、類は類を?そうなんです、どんなのが仕掛けに掛かってるか1年、わしらも気になっていました(笑)。
 今回、初めてとなる「めだかの学校」の武藤館長「来年があるので、どういうものか見ておかねば」と参加。

魚とり魚とり 水中には先ほどから30㎝クラスの鮒の群れが右に左にと行き交う。段差のある下手では、水が引くのに併せて「バシャッ!」と水しぶき、巨体が跳ねる。
「今年は、やけに大物が多いなあ」
 自分の仕掛けに自信を得た井口さんの表情がほころぶ、しかしすぐに「これを、子どもたちが見たら喜んだじゃろうに」と残念顔に。
 柏さんが、次々に仕掛けを持ち上げては網に移し始める。
 「ナマズに、おっ、ウナギだ!」さっそくの大収穫、立て続けに「あっ、2匹目のウナギ!」
 大型の網を用意したのに、それからはみ出さんばかりの、フナ、ナマズ、そして鯉。
 「いやあ、こいっつは大きいなあ」ベテラン指導員の沖さんの両手におとなしく収まった「まな板の鯉」
 館長も「こんな大きい奴、見たことない、すべて初めてです」
 そう言う武藤館長、我らより若いだけあって動きも機敏、修得も早い、網を手に次々と大物ゲット。
 柏さん「いや、そういう大きいのより、小さめなのが捕りたいんです」
 アカザ、ドンコ、ヨツメ・・・、旭川の清流を知る貴重な生き物。

魚とり魚とり 開始から40分、ほぼ回収、いつもなら、まだ家族で魚を追い駆け回っているだろうに。そんな寂しさが常につきまとったコロナ災禍の「魚とり」。
 ナマズや鯉は大河に返してやった。
 明日、一年後に向けて新たな仕掛けをする。 その時は誰にも予測できない、克服してるのか、また別の戦いが起きているのか。
 ただ、夢は描こう、きっと来年「あっ、お父さん、ウナギだ!!」と子どもの声が聞こえることを・・・。

 (取材・写真 三宅 優)