「たけべのお話し」
ねえねえ、おばあちゃん聞かせて、子どもの頃のたけべのお話し
秋 11月 「亥の子(いのこ)」
お百姓が一年のうちでほっとするのは、お米がとれて
俵づめが終わったこのときかね。
親せきの鶴田(たづた)の家ではこの頃、子どもらが、
「亥の子」をして回ってたよ。
「いのこ、いのこ、いのこの夜(よ)うさ、餅つかんもんは、
鬼(お)にゅううめ 蛇(じゃ)あうめ、つののはえた子をうめ、
エットロ、バットロ、エットロ、バットロ・・・」
こうして歌いながら、二十人ほどの集落の子で「イノコ石」という
大きな石を綱で持ち上げ、どっすん、どっすんついて家を回るんだよ。
むかえる家ではお菓子を用意しててくれてね、子どもには
そりゃあ楽しい祭りだったよ。
だから、親せきのおじいさんは今も亥の子の歌が唄えるはずだよ。