■「蚕くらぶ」ミュージカルが訴える ”若者の心の故郷”。          2017年1月19日発信

蚕くらぶ蚕くらぶ 15日午後の建部町文化センターには大雪にもかかわらず、多くの車がやって来た。昼と夕方の2回公演、 第22回「蚕くらぶ」ミュージカル「ふしぎ森の桃太郎の樹」。 記者は昼の部終了直後に初出演となる花房功基さんにインタビューをした。「どうでしたか、初めての舞台は?」
「はい、緊張しまくりのドキドキハラハラでしたが、どうにかやれました。お客さんからも拍手していただきました。次はもっとうまくやれると思います」 
 何とも心強い発言。それでは夕方の部へと入場しましょう。昨年から会場はセンター小ホールに移ったが、出演者と観客とが一体となれる適度な空間が好評だ。 
 昼の部は満席となったそうだが、今回の部もほぼ埋まっている。安定したリピーターに支えられていると感じる。 
 5時開演。映像と音楽からのはじまり。建部の旭川を行く高瀬舟、郷愁が謳われる。そしていつもの「ふしぎ森の人々」登場、時代は400年前。 岡山弁たっぷりのセリフが行き交う中、そこへタイムマシンで建部の悩み多い現代の若者がやって来る。森の人々、悩みを聞いてやる・・・いつもの心やさしい登場者、 そして明るい結末へ・・・が、ここでストーリーは今までにない筋書きとなる。
蚕くらぶ 若者の悩み、「親の干渉、学校規則、友だち、ラインメール、いじめ、スマホ、自殺、飲酒運転・・・」語られるのは今の社会を覆うリアルな問題。 これを、純粋無垢な森の精人たちがどう解決する?物語は複雑な要素を抱えて後半へ。  まちがって22世紀へタイムスリップした若者たちと、手助けに来た森の住人、桃太郎たち。そこはもはや人の住まない岡山だった。汚れた空気、旭川・・・。 森の桃太郎たちは、結局この環境には適せずに死んで行く。悲惨な展開に観客から咳払いもしてこない。21世紀に戻った若者たち、そこでスクスク伸びる新芽を見て、 「自分たち自身で解決していこう」と意を新たにする、フィナーレ。 
 感想はどうだろう?「わかる気がした」、「よく、わかーんない」。 どちらにも納得。脚本家の佐藤淑子氏も「若者のありようが見えなくなった・・・」とパンフレットで述べている通り、誰も今の社会のこれからのことや、 若者たちの心の行き場を言い当てるなどできないのだから。そんなテーマに敢えて挑んだ「蚕くらぶ」の今公演に拍手を送りたい。
(取材 三宅優)