ただ寂しかった。



理由は他に見当たらない。



俺は家を出て、繁華街を少し外れた静かな公園にて、カーディガンを羽織り、小型犬を散歩している清楚な女性からの逆ナン待ちをすべく、小さなベンチに腰を下ろした。



…。



陽は傾き、気付けば
影は長く伸びていた。



募る寂しさと、混じり合うイライラ感。



ちくしょ…



もっとチヤホヤしろ!



心の中では絶叫さ。。。



でも、我慢だ俺。



震える手を、震える手で抑え込む。



そんな時だった。



少しうなだれ気味な俺の影に、一つの影が重なった。



俺は顔を上げる。。。



「隣り空いてますか?」



妖精が現れた…



その透き通った声は、まさにそれの歌声のようだった。



「あ、ど…どぞ。」



焦る俺を見て彼女は微笑みを浮かべた。



「一人で何してるんですか?」



「あ、逆ナン待ちを…はい。。。」



「うふっ、面白い方ですね。」



「いや…馬鹿なだけです。」



「んじゃ、私、逆ナンしちゃおうかな?」



…!?



思考回路ショート、テンパりまくりの俺。



「無理無理っ!きょ、、、拒否、拒否っす!!」



「私、そんなに魅力ないかな…」



微笑みから、悲しみのグラデーション。



彼女の顔から笑みが消えてゆく。



悲しみに曇る彼女の顔が、何だか無性に切なくて。。。



気付けば彼女の唇に、自らの唇を重ねていた。



「名前は?」



「ジェシカ…です。」



俺は右手の親指を天へと突き上げこう言った。



「ジェシカ、あなたの逆ナン、謹んでお受け致します。」



「こんな私の逆ナンでも受けてくれるんですか…」



「もちろんさ。」



彼女の瞳からは、この世の中のどんな宝石よりも美しく輝いた涙が溢れてゆく。



「俺、ジェシカが好きだ…いや、もとい。大好きの王様、大すキングだよ。」



「私も…。あなたが王様なら私は姫に。大好きのお姫様、大すクイーンなんだから!」



「ははっ、こいつぅ!馬鹿だなぁ、下らねぇこと言ってんじゃねぇよ♪」



そう言うと、彼女の鼻を、人差し指でピンッと跳ね上げた。



「も~っ!」



ムキになった彼女の仕草さえ愛しく思えた。



あぁ、愛しの我がジェシカ。。。



いつまでも君と。



ただそう願うだけ。