精神科入院ブログ😊


ある朝、その日は特別だった


初の面会者として、家族がやってくるのだ


面会には、主治医と患者、両方からの許可がいる
普段、誰も訪れてはこないので嬉しかった


朝食を食べ終えたボクは、しばしの休憩のあとホールの南側の窓際、すなわちボクの定位置を陣取る
普段からボクは、昼間、ここにイスを置いてぼんやりとすることを日課としている

まだ、家族が指定した時間には30分以上あった
それでもボクは、日課になりつつある日向ぼっこを始めた
日差しが暑く感じられるにはまだ早い
変わらない景色だ
ただいつもと違うのは下の駐車場を見ても、休診日の今日は車がほとんど停まっていないことだけだった


やがて日差しが暑くなり始め、家族が指定した時間になった
隣にはMちゃんがイスを置いて一緒に日向ぼっこしていてくれた
駐車場を注視していると、一台の車が入ってきた

その日家族は納車されたばかりの車で来院した
最初気づかなかったボクは、「始めて見た…」と、口に出した
ボクは新しい車と家族の訪問に嬉しくなって、隣に座るMちゃんに家族が来たことを告げる
「よかったね😊」
と、優しく言ったMちゃんは気を使って席を外してくれた

家族はボクがここに座っていることは知らないので気づかない

ボクは鍵付き自動ドアの前に移動した
エレベーターの扉が開くのを今か今かと待つ

やがて扉が開き、家族が降りてきた
ボクがここにいることに少し驚きつつも、手を振りながら歩いてきた家族は自動ドアの前で立ち止まる
フロアに入るためにチャイムを押すと、看護師さんが出て来て鍵を開けてくれるシステムなのだ


頼んでおいた荷物を部屋に片付け、日差しの柔らかな西側の窓辺の席へと座る

ボクたちが話し始めると、いつのまにか1人の患者が近づいてきた
大声を出しすぎてガラガラになった声で、「おやつ?」と、目をキラキラさせながら聞いてきた
驚いたのか、黙っている家族に代わり、ボクが「違うよ」と一言だけ伝える


ここにいる人達はほとんど自分の世界に入りっぱなしでなかなか他者への関心というものが湧いてこない人が多い
それでも急に、周りに興味を持ち突然関わってみるのだ
その、自分の世界と他者への興味の切り替えスイッチが、とてもディープなところに付いているようだった
そしてその切り替えは突然される

その方は「違うよ」の一言で、何事もなかったかのように背を向けてどこかに去っていった



人は誰しも自分の中に、自分の世界を持っている
ボク達家族は、ボク達の世界に帰る

ディープなスイッチが切り替わっただけのあの人は、特にガッカリした訳でもなく、ただ単にあの人自身の世界に帰っていっただけなのだ

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