1月13日・14日と連休をいただきスタッフ連れて南信の5蔵を回ってきました。

 

上諏訪の本金。

塩尻の笑亀。

上伊那郡の今錦(米澤酒造)。

伊那の仙醸。

木曽の九郎右衛門(湯川酒造店)。

 

こだまでもお馴染、いつもお世話になってる蔵の「いま」を覗いてきました。その時の他のことはまた書くかも知れないし書かないかも知れません(笑)ま、あまり期待しないでお待ちください。

 

その中で、今回は仙醸のこと。

桜でも有名な伊那市高遠にある中堅蔵です。

こだまでは「黒松仙醸こんな夜に」でファンの方も多いですよね。

 

全盛期の生産石数1万石近く、現在でも約2千石とこだま扱い蔵の中では大きい方で蔵というよりは工場に近いイメージの蔵。大きな仕込みがメインとなることもあり無難な酒質が多かったのですが平成17年頃から小さな仕込みを導入、そう、「黒松仙醸こんな夜に」がまさにその仕込みなのですがそのクオリティの高さで人気となり、こだまでの売上も1,2を争う人気酒となっています。犬と自転車と釣りを愛する中田英寿さん似の安藤宏幸杜氏が23BYより指揮を執り、毎年美味しいお酒を届けてくれています。

 

そんな仙醸。実は麹造りも自動製麹機(マニアックですがK.O.S式と呼ばれる高性能なもの、こだま扱いでは奈良萬を醸す夢心酒造さんが同型です)を使用し衛生的にきめ細かい麹造りをしてきました。しかし今回、33年ぶりに新しい麹室(こうじむろ)を新設し、いわゆる皆さんが想像するところの手作りの麹造りも可能になったというので見学させていただきました。

 

蔵の二階に上がると・・・ありました。

 

 

新品ピカピカの麹室です。ここ、前は事務室というか分析室で蔵を訪ねる度にお邪魔していた部屋なのでちょっとびっくり。奥の左側にもうひとつ扉が見えますが(後ほど写真を)この壁の中で二つの部屋が繋がっている構造です。中央奥に見える明るい部屋が広~い仕込み部屋、そして右側のガラスの向こうにはK.O.S自動製麹機があります。

 

 

扉を開けるとこんな感じ。床(とこ)と呼ばれる台になっていまして、蒸した米を初めにここに引き込んで作業をします。

 

 

で、これが奥の扉。

 

 

これを開けると中はこんな感じ。こちらで今も麹を育てている状態でした。決して広くはない麹室なので最大で150Kgまで=総米1,500Kg程度の仕込みまでがギリギリということでした。

 

K.O.Sも凄い機械なんです(マジで)。下手に麹室で製麹するくらいならよほどいい麹が出来ると明言する蔵元もいるくらい。だからこそ今までクオリティの高い仙醸の酒が出来ていた訳ですし。

 

・・・なんですが、安藤杜氏曰く

 

出来てくる麹がぜんぜん違う。

 

んですって。

いい、悪いで語るのは野暮な気がするのですが、とにかく麹の見た目も違うし味も違うそうで、いい意味で「深みが出ている気がする」とのこと。

 

では、そんな麹で造ったお酒をテイスティングしてみましょう。

 

 

じゃーんw

 

 

いえーい、ノリノリだぜぇw

 

テイスティングルームで安藤さんが最近手に入れたばかりのストラトを弾かせていただきました(笑)松本の工房製とのことでしたがまずボディがすげー鳴ります。普通ストラト(フェンダー製)の場合、アルダー材やアッシュ材を使うことが多いのですがそれに比較して全然重い。感覚ではオールメイプル的な重さとギラつく鳴り、そして指板がフラットで弾きやすく個人的にはめちゃめちゃ好きなタイプでした(おいおいなんのブログだいw)。

 

てな訳でテイスティングしてみると

 

柔らかくて深みがある。

 

どのお酒もそうなんです。これでも一応19BYからの「こんな夜に」を全て飲んできた僕なのでハッキリ言えますが、こんな夜に史上もっとも柔らかさを感じることは間違いありません。実際に酸も少し抑えられる傾向にあるようで、その辺もこの柔らかさに一役買っているように思います。

 

驚きました。

いや、もちろん全てが麹のせいとも言えませんがそれでもかなりの影響を与えていると考えて差し支えないと思います。同じ蔵で同じ材料で同じ人が同じように造っているのにこんなに変わるなんて酒造りってやっぱり奥が深い。

 

逆にシャープで尖ったニュアンスは弱くなっていますので、そんな感じが好きな方には不評かも知れません。が、酒質としては間違いなく向上していると思います。

 

安藤さんもめちゃめちゃ刺激を受けていました。と同時にかなり疲れていました(笑)というのもこの日は麹の世話で二日連続で泊り込みの翌日だったそうで、今までの製麹機ではそんなことは必要なかったので労働時間は確実に増える結果になっています。

 

 

それにしても伊那の空は青かった。

この写真、ちょっとよくない?誰か映画のポスターとかに使ってもいいよ(笑)

 

 

今期の仙醸のお酒、そんなところに注目して味わっていただけると美味さもまたひとしおと思います。

 

進化であっても深化であってもそれは「変化」であり、賛否両論が必ず発生します。でも今回の設備投資は未来の仙醸にとっては間違いなく強力な武器になるはず。蔵も人も生きています。短期的な目ではなく長期的な視点で応援をよろしくお願いします。

 

安藤さん、これからのお酒にも期待しています。お忙しいところお昼ご飯にまでお付き合いいただきありがとうございました。造りが終わったらまた飲みましょう♪