さて、丸世さんを後にしてもう一軒寄らねばならぬ蔵元さんがいる。

丸世さんからあまりにも近いので、関社長が車で送ってくださった。

(関社長、最後まで本当にありがとうございます)


着いた先は、志賀泉を醸す志賀泉酒造株式会社。

約束の時間を2時間近く遅れたというのに笑顔で迎えてくださった

中山佳紀ご夫妻、ホントにホントにごめんなさい。


まだお若い中山夫妻と出逢ったのも5月の長野酒メッセでした。

今も覚えているが、大吟醸と純米が凄く好みに合って

知り合いを何人も連れて行き、顔を覚えていただいた。←迷惑w


まず驚いたというか「うわー♪」と思ったのは敷地の広さ。




写真じゃ伝わらないだろうけど、野球もサッカーもできる(笑)


現在の造りは約300石だそうだが全盛期は3000石造っていたという。

その名残の広さもあるだろうがこの後、蔵の中を見せて頂いて納得する。


では、蔵の中へ行ってみましょう。



これは洗米し終わったお米を水ごとずずーっ!と吸い込んで

米を蒸すところに運ぶ機械、というか道具、というか設備(笑)

ちなみにここは1階、蒸米の場所は2階にあります。



これ、実は初めて見たもので「なんすか?これ」と聞いた機械。

答えは「蒸米機」(でいいのかな?)要するに米を蒸す機械。

大量に蒸米ができるが手作業に比べると蒸米の出来はよくないという。

なので今は普通酒の一部のみでほとんど使っていないとのこと。

これが3000石生産の頃の遺物のひとつ(笑)




これはまぁ普通の放冷機なんだが先ほどの蒸米機と並んでると

なんだか必要以上に「マシーン!」な感じを受けてしまう(苦笑)



麹室の入り口です。



麹室の中です。

右手前には自動製麹機もありますが、これもほとんど使ってないとのこと。


とにかく3000石の頃の遺物というか後遺症があちこちに見える。

その極みというか、ぶっ飛んだのがこの酒造タンクたち。





で、でかっ!(笑) 

これでも減らしたらしいのですがそれでも4列あります。

現在使っているのがそのうち1列とのこと。

しかも小さいタンクがないのでこれで吟醸も仕込むらしい。

「大きなタンクでの小仕込にやっと最近杜氏も慣れてきた」

とは中山さんの言。うーん、そりゃタイヘンだぁ。(脱帽)



ご存知、ヤブタです。(搾り機)

ベージュって珍しくないですか?初めて見た気がします。


総じて感じたのは「大きな設備で小さく造る苦労」でした。

佳紀さんが「こんな余計な機械買うくらいなら他のために金を

残しておいて欲しかった」と呟いたのは心からの叫びでしょう。


現杜氏が74歳とのこと。

今年の造りからは27歳の佳紀さんが杜氏として挑戦を始めます。

心から応援したいと思います。


外に出て、ふと後ろを振り返るとこの風景。



裏山の肌にお墓が並んでいます。

なんだかとてもいい風景です。ご先祖に護られている土地なんでしょう。



さて、最後に試飲タイム。

純米酒、特別本醸造、本醸造ひやおろし、大吟醸、

そしてここには写ってませんが吟醸のひやおろしを。


あ、家で撮った写真には吟醸も写ってます。



・・・・・え?なんでこのお酒が家にあるのかって?(汗)

まぁまぁ、世の中には知らなくていいことがいっぱいあるから(笑)

(佳紀さん、ありがとうございます)


あらためて呑んでみると「特別本醸造・信濃」の出来がなかなかいい。

吟醸香を軽くまとった奥行きのある優しく甘い味わいは出色です。

これは呑み飽きすることなくゆっくり呑んで真価を発揮する酒でしょう。


ちょっとだけお酒の味について書きます。

この蔵元のいいところは、味が奥深いこと。派手さとは無縁の奥深さ。

インパクトは皆無。時間をかけて味わうことで良さを見つけられる酒質。

だから、肴と合わせてゆっくり呑んで初めて「旨い」と思える酒なんだな。

味わうごとに奥に潜む旨味と優しい甘味に気付いてずっと呑んじゃうお酒。


裏を返すとインパクトと即効性がまったくないから

開けてすぐ一杯呑んでもらっても良さは見つけられないかも知れない。

この蔵元の良さはそこじゃないから、その基準では太刀打ちできない。

まさに当日の僕がそうであったように。


今、家でゆっくりこれらを味わう時初めて、良さを感じて呑んでます。

これからもっと伸びるためには「ならでは」の個性を身につけることだけど

それはこれから自身で感じながら身につけてもらいたいと思うのです。


佳紀さんと写真を撮ってもらいました。



1枚目はちょっと真面目に(笑)



2枚目は無理を言って肩を組んでもらいました(笑)


僕はこの蔵の控えめな姿勢が表れたこの蔵のお酒が好きです。

だからこれからも応援していきたいと思っています。


中山佳紀さんと奥様、本当にありがとうございました。

休日に、しかも遅れて現れて本当にすみませんでした。

志賀泉のこれからに、心から期待しています。