2月25日に偶然のご縁で訪ねた埼玉の和久井酒造さん から

「大吟醸の搾りの時に是非お出で下さい」と嬉しいお誘いを頂き、

ウキウキしていたものの結局そのXデーは3月29日の平日!

一応会社員(笑)の僕が伺える筈もなく、涙を飲んだのであった。


ところが今度は純米吟醸の搾りがあるという。

それが3月31日か4月1日になりそうだという。

31日だと土曜日で仕事のため行くことができない。

しかしモロミは生き物だから発酵次第で延ばすことはできない。

もう祈るしかないし、たとえ31日に搾りが終わっていたとしても

今回(4月1日)はとにかく行こうと思ってた。


しかし、お酒の神様は僕を見放しはしなかった!

「日曜日(即ち4月1日)の午後から始めようと思います」

との社長のお言葉に思わず「おっしゃっ!」とガッツポーズ。

てな訳で、今回の訪問と相成りました。


和久井


今回は物好きにも同好の志が現れました。

音友酒友のよしふみ氏です。僕と違って優しくていいヤツです。

なんてったって出発の池袋まで2時間もかけてやってきた(!)

もうそれだけでエライっつーか、酒好きってやーねーっつーか(笑)


特急ちちぶ(って最近レッドアローって言わないのね)の車内で

軽く呑んで盛り上がる。一人じゃないのもなかなか楽しいのだ。


池袋から西武秩父まで1時間ちょっと。

和久井酒造さんのある吉田というのはちょっとした山奥にある。

バスも一日に数本なので、迷わずタクシーに乗り込む。


ここでちょっとした勘違い。タクシーでほんの15分くらいと思っていた。

ところが行けども行けども、というかメーターが上がれども上がれども、

ちっとも和久井酒造さんに着かないのだ。

もちろんタクシーが遠回りをするなど悪行を働いている様子はない。

結局、約6,000円(!)もかかって和久井酒造さんに辿り着く。

メーターを見て一瞬、固まったのは言うまでもない(苦笑)。


和久井
正面から和久井酒造さんを望みます。風情のある玄関。


和久井

玄関入ってすぐのところ。手前の火鉢は現役です。


再訪の挨拶の後、事務所でしばし酒談義。

お昼時ということもあり、奥様がお膳を用意してくださった。

大変申し訳なく、しかし有り難くいただくことに。


初めて頂いたのだが、カツ丼だという。

ゴハンの上に薄味のついたカツが2枚乗っている。

東京で見慣れたカツ丼のように卵や玉葱等はない。


聞くと「秩父地方のカツ丼」はこれなのだという。

1枚を酒の肴として、もう1枚をゴハンと共に食すのだという。

シンプルな味付けにしてこれがなかなか旨い。

しじみの味噌汁、菜の花の辛子和え、しゃくしなの漬物の

名脇役と共にペロッと平らげる。ご馳走様でした。


食事中も社長とずっと酒談義。

二度目ということもありお互いの想いもある程度理解してるから

突っ込んだ話もできて非常に勉強になった。


さて、そろそろ搾りが始まります。


和久井
玄関左手に位置する釜場。ここで米を蒸すのです。

この右手奥が蔵への入り口になっています。



この左のタンクに仕込まれた純米吟醸を今日は搾ります。

タンクをかき回している蔵人は、社長の弟さん。

こちらでは社長含めてたった3人で130石を醸しています。


搾る前の「モロミ」を味あわせていただきました。



フラッシュで白くなってわかりにくいですね(苦笑)。

モロミのままでは「酒」のニュアンスはちょっとわかり辛いです。


さて、それでは搾りが始まります。


和久井

タンクからチューブを辿ってこのポンプを経由して・・・・・


和久井

このヤブタ(圧搾機)へとモロミが流れ込み、圧搾されて・・・・・



このタンクへと搾られたお酒が流れ出てくる仕組みです。


まずは搾り始めのいわゆる「荒走り」が流れ出てきます。



来ました!これこそまさに搾りたて!

おおおぉぉっ!・・・・・なんだか感動的な瞬間です。



いかがですか?4時間かかって辿り着いた搾りたてのお味は?(笑)


一番最初に流れ出てくる「荒走り」は少し白濁していて、

正直言うと、味も香りもまだまだ乗っていない荒削りなものです。

(時間をおけばある程度乗ってきてこれを発売する蔵元もあります)


そこでこの「荒走り」を一度別のタンクに移してからがまた別の楽しみです。


和久井

ごらん下さい、色が全然違うでしょ?いわゆる山吹色。

これがいわゆる「中汲み」と呼ばれる真ん中の美味しい部分。

先ほどの荒走りと比べて比較にならないほど香りと味が乗っています。


この他、29日に搾ったばかりの大吟醸(無濾過生)を利きます。

袋吊りで搾り斗瓶で囲ったとのこと。(うー、やっぱり行きたかったw)

No.2から4までを一通り利いた感想を書き留めておきます。


No.2 最も香りが立つ 加水して市販するには一番受けると思う

No.3 香りと味のバランス良し 故に逆にどう市販するか迷うタイプ

No.4 完全に味吟醸 甘味強くコクがガツン いっそこのまま無濾過で


それから地場産山田錦玄米仕込み、これは酸が強く面白いお酒

批判を恐れず、個性の強いこのまま自信を持って出して欲しい


和久井

よしふみ氏も好みのお酒が見つかったようで良かった。


和久井


繰り返しになるが、一夫社長とお会いするのは今回二回目。

酒造りへの想いをオフレコも交えながらたくさんお聞かせ頂いた。

今はまだ埼玉の山奥の名もない蔵元だけれども(すみません)、

僕はやはりこの蔵元の酒とそして蔵元の人柄が好きだ。

だからこそ、今後、何らかの形でこの蔵を世に出したいと思っている。


和久井酒造のお酒の良さ


・どの酒にも共通して「独特の柔らかい甘味」が流れている

・甘いだけでなくキレがあって締まっている(甘い辛口)


これから改善したらいいなと思うところ


・いかんせん全体に雑味が多い

・無濾過生を流通できるルートを確保して世に出したい

・柔らかい甘味以外の個性を感じる酒質を望む


生意気言ってすみません、一夫社長。


12時半から17時半まで5時間も滞在してしまった。

帰りはもう一人の蔵人、倉林さんが西武秩父駅まで送って下さった。

車内でも造りの話で盛り上がる盛り上がる。

次回は秩父に宿をとって、社長を含めて呑む約束をした。



西武秩父駅前から望む、秩父の象徴、武甲山。

幼少から山をやっていた自分にとって、ある意味特別な山のひとつ。

石灰岩で形成されていた故に削り取られて2/3の山容になった。

この姿を見るたびに、とても切なく悲しい気持ちになる。



そして、帰りの特急ちちぶ車内で、名残の宴会。

想い出を語りながら呑む「慶長・特醸酒」はこれまた旨い。


素晴らしい旅にご一緒してくれたよしふみ氏に感謝。


和久井酒造株式会社 (埼玉県秩父市)