さて、武甲酒造を辞して次の蔵元さんへ向かおう。
・・・・・っと、その前に、あ、お昼です。ゴハンにしましょう。
ということで向かったのは秩父から車で10分ほどにある、福田家。
皆野町(みなのまち)にある地元じゃ知られた旨い蕎麦屋である。
http://gourmet.yahoo.co.jp/0000547422/M0011000976/
O澤さん曰く、「秩父界隈で一番旨い蕎麦屋」とのこと。
うん、旨かった。二八か三七くらいかな、喉越しのいい蕎麦。
天麩羅もカラッと揚がって申し分なし。
名物のゴマ味噌ダシ汁もサッパリしてなかなか旨かった。
でもさ、O澤さん。
武甲酒造でそこそこ呑んで、福田家に移動中に二人で2合呑んで、
福田家で2杯ずつはちょっと呑みすぎだろ(笑)旨かったけど!(爆)
さてさて、お次に向かうは秩父市でも上吉田というちょっと山の中にある
和久井酒造株式会社 (主要銘柄:慶長)である。
失礼ながらもはや観光蔵と化しているT錦など寄る気はせずに探していたら
もう一軒だけ見つけた造り酒屋さんなのですが、正直期待は全然なかった。
しかし。
この偶然がもしかしたら凄い出逢いになっちゃったかも知れません。
和久井酒造までは車で15分ほど。交通はかなり不便な山里に位置する。
電話で予約時、奥様に「どうやっていらっしゃいますか?」と心配された(笑)
地理的には埼玉と言えど群馬県境にかなり近い。
うーん、いい雰囲気でしょ?山に近いのが、空気でわかる。
迎えてくださったのが、和久井一夫社長。
創業は1860年というから約150年の歴史、一夫社長で5代目という。
造り酒屋としてはそれほどでもないがそれでも長い歴史ではある。
2年前までは南部杜氏がいたが「これからの地酒は地元の人間が造らねば」
という大英断の結果、現在は一夫社長が杜氏として腕を揮っている。
玄関を入って、奥の右手が蔵になっている。その蔵へ入って驚いた。
タンクが・・・しかも吟醸造り用の小さいタンクが5つ並んでいる。
・・・・・それだけ。その他は近くの湧き水を溜めて濾過するタンクだけ。
聞けば総生産石数は130石だという。
どひゃー☆一升瓶に換算して、たった13,000本ですよ。
なんつー凄い蔵元さんに来てしまったのか、正直戸惑ってしまった。
これはなんと、「地元産山田錦を玄米で仕込んだお酒」。
生産量があまりにも少なく、勿体無いから玄米で仕込みました!って(笑)
たしかに通常のモロミよりも色が濃くて少し赤みを感じる。
これは呑んでみたい一品であるな。
麹室も見せていただくことが出来た(ありがとうございます)。
34度まで上げる設定で現在30.2度。
いいお酒に育てよ・・・と心の中で手を合わせる。
上級酒にはこの麹蓋も使用する。
手にとって見せていただいたが、結構傷みが激しい。
現代ではなかなか修理・入手が難しいもののひとつである。
それでも一夫氏曰く「麹の出来が全然違います」とのこと。
麹室から出されて乾燥させている麹。
つまみ食いしたかったが、さすがに理性がそれを抑えた(笑)
そして、運命の?試飲。
蔵元が準備して下さったのはこの写真の2本に純米を加えた計3本。
呑んだ瞬間、大袈裟に言えば稲妻が走りました。
凄いっ
一言で言えば個性があって旨い酒。甘くてそれでいてキレる酒。
この2本、実は両方とも市販本醸造用に醸したものであって
本来は最終的に火入れしてさらにブレンドして出荷されます。
それをそのまま出してきた、市販されない筈の貴重なお酒なのです。
共通のスペックとして、岡山県産アケボノを65%精米。
大きな違いと言えば、左は香り重視の901酵母、
左はカプロン酸系の香りが生まれる埼玉C酵母を使っていること。
あとは仕込みに使う水の量、麹米率を少し変えて造ったとのこと。
どちらが好き、というよりも、どちらも凄かった。
搾りたての旨さはあちこちで味わい、理解していた筈の自分。
というかこの2本は生原酒ではあるけれど、搾りたてではない。
火入れこそないが、軽い(数g程度の)炭濾過もしている。
思わず「この2本、売り物じゃないだろうけど売って下さい!」(苦笑)
そしたら「これは売り物ではないですから」と、なんと!無料で下さった。
嗚呼、感謝。今思えばあの純米も頼めばよかったなー(笑)
この後、幾つかの市販酒も呑ませていただいた。
この蔵元のお酒全般に言えることだが、独特の甘味(=旨味)がある。
しかもそれでいてキッチリキレる。非常に僕好みのお酒である。
語弊はあるが、群馬の分福に似た奥行きのある味わいである。
3月末から4月頭に、今仕込んでいる吟醸の搾りの予定だと言う。
頼んでみたら、是非!ということで再訪のお約束をいただく。有り難い。
運転していただいたO澤さんの奥様、本当にありがとうございました。
期待していなかっただけに、本当に嬉しかった。
慶長、秩父でもそれほど出回っている訳ではない。もちろん東京では皆無だろう。
3月4日の四季酒の会で、池月本醸造生原酒(これも非売品)を引っ込めて
その代わりに参考出品としてこの本醸造を2本出品することにした。
どこでどんな出逢いがあるかわからないのが、蔵元訪問の醍醐味でもある。
と言う訳で、今回この6本を電車で持ち帰った。
はい、腕が疲れました(笑)が、素晴らしい出逢いの一日になりました。
武甲酒造の長谷川明生さん、和久井酒造の和久井一夫さん、
そしてワタクシの馬師匠、O澤さんとそのご家族のみなさん、
本当にありがとうございました。