秩父の酒蔵、というとみなさんはどんな印象があるだろうか。

僕は、正直に告白すると「辛口で痩せた印象の酒を造る地域」

そんな印象を持って今まで生きてきたのです。


しかしこれは濡れ衣ではなく、事実でもあったはずなのだ。


今回、ある方の縁で2軒の蔵元を訪ねた。

そして結果、その悪い印象がガラリと変わった。

それを拙い文章でこれから綴ろうと思います。


池袋駅発8:30の特急レッドアロー号。



久しぶりだなぁ♪ 乗る前からワクワクです♪(子供か!w)



え?朝ですがナニか?www

お酒の味に関してはノーコメントでお願いします(笑)

梅こんぶ茶がオヤジ臭さを煽ります(爆)


今回、橋渡しとなってくださったのが一口馬主仲間(大先輩)のO澤さん。



お酒とは関係なくて恐縮だが、

僕がマヤノトップガンという馬を好きにならなかったら

O澤さんと出逢うことはなかったであろう。

だから今回の旅は「トップガンが僕を秩父に連れてきた」のだ。


人と人との縁が僕を導いている。

それを実感する一日になった。O澤さん、本当にありがとう。


まずはそのO澤さんの同級生(悪友っぽかったなぁw)だという

長谷川明生さんのいらっしゃる武甲酒造株式会社 にお邪魔する。



実は先ほど申し上げた「辛口で痩せた印象の酒を造る地域」

の印象を僕に植え付けた張本人がこの武甲酒造なのである。

(あ、もう1社あるがさっきノーコメントにしたからいいかw)


しかし今回はその固定観念なしで進むことにする。



蔵の中に湧く井戸水。秩父古生層を経た中硬水とのこと。

この水で武甲正宗は醸されているのだ。


今回はO澤さんのお力もあり、タンク1本1本まで見せていただいた。

(麹室のみ「消毒中」で残念ながら見れなかったが)







都合10本ほどのタンクをひとつひとつ覗いていく。

普通酒、本醸造、純米吟醸、にごり、もちろんそれぞれ香りも違う。

面白いことにその中で最も「旨そう」な香りを放っていたのはなんと、



       一番安い普通酒



のタンクでした(驚)


なんでなんだかは造ってるご本人もよくわからないらしい(笑)

ただ、廉価な酒にも力を入れて造っている姿勢がよく理解できた。

放冷機 仕込時期だけに日曜もなく働いてます


米を蒸す甑とその奥に放冷機 合理的な配列ではある



モロミから垂れる酒で酒質を判断するのでしょう


通常の絞りはヤブタにて 今日は普通酒を搾ってました



搾りたての何も手を加えていない普通酒、美しいです。

残留する炭酸と新酒ならではの苦味と、そして強烈な甘味。

雑味も多いがこれが普通酒かと驚く鮮烈な旨酒だ。


「長谷川さん、コレこのまま売ったらメッチャ売れますよ!」

という僕の無責任な発言に

「ホント、僕も常々そう思ってるんですがなかなか・・・・・」

とちょっと歯切れの悪いお答え。


実際の販売価格、普通酒としての出荷量、

その他もろもろが現在の武甲正宗の経営路線に合わないのであろう。
それはとやかく言う問題ではない。しかし、事実この酒は旨かった。


上級酒はこちらの槽(フネ)にて搾ります 袋吊りもやっているそう


瓶燗もするがこちらでの火入れがスタンダード

粕取り焼酎も造っています ちょうど粕を機械に入れていました



正面の売店から蔵へ向かう廊下 右手には試飲室が



総石数約2,500石のうち9割が地元で消費されるという

典型的な地元密着型である武甲酒造さん。

だからこそ普通酒や本醸造に力を入れる姿勢はよくわかる。


ちなみに普通酒には糖類が添加してある。

この点を問うと「あくまでもバランスを取るため」とのお答え。

「あの酒質」を持っていながら・・・少し勿体無いように思った。


手厚いもてなしに感謝すると共に今後の応援を約束した。

今の武甲正宗は正直言って「地方の大手」の典型的な酒蔵と思う。

個性を出すには如何せん大きすぎるのだ。


ただ、明生さんの言葉の端々に「いつか面白いモノを出してやる」という

気迫というか想いというか、何かしら期待していいものが見えた(気がする)。

それが製品として世の中に登場した時、武甲酒造はまた一歩先へ行く。



純米大吟醸「秩父吟嶺」(720ml/¥2,100)

武甲正宗本醸造(720ml/¥800)

この2本を買い求めて蔵元を辞した。

長谷川さん、本当にありがとうございました。

面白いお酒のご報告、心よりお待ちしています。



蔵の裏手。のんびりとした風景に爽やかな風が吹き抜けた。


(第二回へ続く)