もちろん、
もう皆さん観ましたよね?
宮崎駿さんの『 風立ちぬ 』です。
僕は八月のお盆前に観たので、もう二ヶ月くらい経つのですが、まだ心に印象が残っています。
僕は正直、ジブリや駿さんにファンと言えるほどのそんな思い入れは無いのですが、でも駿さんは、黒澤明級の世界に誇れる凄い作家、クリエーターだと思います。
人間的には、メディアで見る限り、ただの頑固ジジイにしか見えないのですが、
作品にかける情熱と集中力がハンパないですよね。
あれはプロでさえも誰でも出来る事ではない。
あの情熱と集中力が、彼も気付かぬウチに何か凄いモノを呼んでしまっているのではないか?と思う。
簡単に言うと、人間が書いたとは思えない。
異世界のモノが書いているように、僕には感じる。
駿さんのインタビューを最近読んだのだが、その志の高さにも驚かさせられる。
『となりのトトロ』がビデオ化、DVD化された時、本当は嫌だったそうだ。
でも会社だから、社員食わせないといけないから了承しないと仕方なかった。
そしてやがてファンの方から
「もう大好きで毎日観てます!」とか、
「子供が大好きでセリフ全部覚えてるんですよ」
とか言われる。
駿さんは、
「だからビデオ化なんてしたくなかったんだ!これは悲劇だ!!」
と嘆いたらしい。
そして「アニメなんて子供時代に一本観りゃあ充分なんだ!同じものを100回観たとか、ただの消費だ!時間の無駄だ!」とまくし立て続ける。
でもその裏には、
「アニメなんて観てる時間あったら、実際に自分の肌で経験して感じて学んでほしい。自分で体験することの方がずっとずっと大事なんだ!」
という思いがあるらしい。
これは本当は大人にとっても同じだと思う。
敬愛する故・淀川長治先生も
「映画は見過ぎちゃダメですよ~」 と、おっしゃっていたのを思い出す。
『風立ちぬ』は、そんな、映画をあまり観ない人がたま~に観る一本に相応しい映画だと思う。
駿さん、この作品を描きながら、このお話がどこが面白いか自分でも分からなかったらしい。
描くには描いているが、
「これ、面白いのか???」
と自分で頭をひねり自信がない。
すると毎回、(確か)若いナントカさんとかいう女性スタッフが「これ絶対面白いです!」と絶賛してくれるので、彼女を信じてそのまま書き続けたとか。
僕も、ストーリー構成として、この話が面白いかどうか良く分からない。
でも、面白かった。
絵が全部良かった。
ただの風景の絵からさえも、生きることの情熱や喜びが感じられた。
日本人の美しさが溢れていた。
今の日本人は、僕も含めて、いつからこんな腑抜けになってしまったのか?と反省させられる。
感じたのは、
生きること。
時代と、その文化の中で生きているということ。
それぞれの定め(条件)のなかで生きるということ。
その制限ある中で、どれだけ情熱を持って夢を追いかけ、生きれるだけ生きるのか!ということ。
その時代と文化は、自然、国土の上にあるのだということ。
駿さんとしては、今までと違う映画を作ったつもりらしい。
確かに子供向けではないし、完全に大人向けの作品。
でも僕にとっては、これこそ駿さんの集大成だと思った。
これまでの駿さんの見えないメッセージが全部詰まっている気がした。
これぞ宮崎駿!!
それはもしかしたら駿さんの意図しないところでそう思ったかもしれない。
駿さんから「そうじゃない!」
と言われるかもしれない。
でも、僕もそれに対して「そうじゃない!」と反撃したい。
「駿さんの作品、特にあなたの最後の3作品には、駿さんが意図しない凄いものがいっぱい含まれているんですよ!あなたが気づいていないだけです。」と。
『ポニョ』と『ハウル』と『風立ちぬ』は、凄い作品だと思う。
『ポニョ』は幼児向けの作品だと思ってずーっと観てなかった。
でも去年くらいかな、やっとDVD借りて観てショックを受けた。
凄すぎて興奮して眠れなくなった。夢に出て来そうだった。
でも、これも『ハウル』も何が面白いのかは今だにサッパリ分からないのではあるが。笑
まだ映画館で観れますので、まだ観てない方は是非ご覧下さい。
たとえ全然面白くない!と思ったとしても、何か心に残る作品だと思います。
昔の名画って、そんな作品ばかりでした。
最近の映画は、消費される『商品』ばかりになってしまいました。
『 風立ちぬ 』
美しすぎて胸が苦しくなりました。
お薦め度
星5つ ☆☆☆☆☆
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