今、突然に【孤島の鬼】江戸川乱歩が描いた奇怪な世界 | みそのブログ

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萌えどころを共有するブログ。諸事情により8割方痛いブログとなっていますが後進のために残してます。限定取扱注意でお願いします。たまに突然創作。植物昆虫の生き様を愛してます。トプ画はSOURIのお隣にある、みそはっぴぃの奇跡の一枚。



⚠️今回文字引用ばかり・区切りなしで無用に長いので、タイトルの書籍にあまり興味ない方はUターンで....ペコリ💕


みその雑記

「孤島の鬼」とは愛される甘美に酔いしれ、何を犠牲にするでもなく、そしらぬ顔で捧げられた愛を弄びなお生き延びる、欲張りで貪欲な蓑浦のような生き様の事なのかもしれない...。なんて美しき残酷な鬼。

完璧なものよりも何か大事なものが欠けている方が、魅惑的で美しい。




唐突に!!

【みその愛読書紹介シリーズ(続きません)

このブログ読んでくださってる方は、既読率高いと思いますが....。


時々読み返したくなるので、何回も買い直ししているこちら。久しぶりに読んだけど、やっぱり本当に✨素晴らしい作品✨です。

文庫の初版は1987年(昭和62年)です。私が読んだのは文庫が出てからですが、雑誌掲載はなんと昭和4年。まさに当時は革命的作品すぎて、本当に夢中になりました。福永武彦の草の花に並ぶバイブルですね。

でもね。正直これ文学作品といった堅苦しさはなく。

超〜簡単にみそ的あらすじ言っちゃうとね?

魅惑の美少年が、壮絶な過去をもつ年上インテリ美青年を、散々夢中にさせ振り回した挙句袖にする話。


⚠️あるいはある殺人事件をきっかけに、恐ろしい陰謀をもつ狂人の正体を突き詰めていくお話です⚠️

諸戸がね...諸戸がね...とにかく最後まで蓑浦君(主人公)を愛しすぎているんだよ。無条件にまるで溺れるようにただただ愛してる。この2人の絶妙な距離感は本当に何度読んでも死ぬほど悶えてしまいます。

まずは冒頭、ここですよ。


(引用ここから)

容貌については、私は以前からやや頼むところがあった。諸戸道雄というのは矢張りこの物語に重要な役目を演ずる一人物であって、彼は医科大を卒業して、そこの研究室で或る奇妙な実験に従事している男であったが、その諸戸道雄が、彼は医学生であり、私は実業学校の生徒であったころから、この私に対して、かなり真剣な同性の恋愛を感じていたらしいのである。

彼は私の知る限りにおいて、肉体的にも、精神的にも、最も高貴な感じの美青年であり、私の方では決して彼に妙な愛着を感じているわけではないけど、彼の気難しい選択にかなったかと思うと、少なくとも私は自分の外形について、いささかの自信を持ちうるように感じることもあったのである。

(中略)

彼は私のからだを石鹸のあぶくだらけにして、まるで母親が幼児に行水でも使わせるように、丹念に洗ってくれたものである。最初のあいだは、私はそれを単なる親切と解していたが、後には彼の気持ちを意識しながら、それをさせていた。それほどのことでは、別段私の自尊心を傷つけなかったからである。
散歩のときに手を引き合ったり、肩を組み合うようなこともあった。それも私は意識してやっていた。時とすると、彼の指先が烈しい情熱をもって私の指をしめつけたりするのだけれど、私は無心を粧って、しかし、やや胸をときめかしながら、彼のなすがままに任せた。といって、決して私は彼の手を握り返すことはしなかったのである。

(引用ここまで)


さぁさぁさぁ。散々気を持たせられた諸戸先輩は、とうとうある日限界を迎えてしまいます。外食をし、酔っ払って下宿先に帰ってきた2人。蓑浦君の部屋にもつれるようにして雪崩れこみ...


(引用ここから)

諸戸は私の傍に突っ立って、じっと私の顔を見下ろしていたが、ぶっきらぼうに、
「君は美しい」
といった。その刹那、非常に妙なことをいうようだけど、私は女性に化して、そこに立っている、酔いのために上気はしていたけれど、それゆえに一層魅力を加えたこの美貌の青年は、私の夫であるという、異様な観念が私の頭をかすめて通り過ぎたのである。
諸戸はそこに膝まづいて、だらしなく投げ出された私の右手を捉えていった。
「あつい手だね」
私も同時に火のような相手の掌を感じた。



(引用ここまで)


この大事なところあえて一行あけるあたり....

大好きです真顔

はい。行間は想像で埋めますので....

この一件以来気まずくなって蓑浦君は下宿を出てしまうんですが、それ以降もずーっとずーっとずーっと、諸戸は蓑浦君を想い続けるんですよ。

むしろ『いよいよこまやかに、いよいよ深くなりまさるかと思われた恋情』を、蓑浦君は全身で感じながら25歳になり恋人を持つんですねー。

内気者の蓑浦君は、同年代より歳上にモテモテ。


(引用ここから)

年長の友だちはほとんどすべて、深山木幸吉とても例外ではなく、多かれ少なかれ、私の容貌に一種の興味を持っているように思われた。

(引用ここまで)


蓑浦君の恋人初代さんが突然、何者かに殺されてしまいます。嘆き悲しんだ蓑浦君は↑の深山木幸吉パイセンに頼る訳ですよ。


(引用ここから)

彼は乱れた長い頭髪を、指でうしろへかきながら、ちょっとはにかんだ表情をした。彼は私に会うと、きっと一度はこんな表情をするのだ。(中略)
「恋、ええ、まぁ...その人が死んじまったんです。殺されちまったんです」
私は甘えるようにいった。いってしまうと、どうしたことか止めどなく涙がこぼれた。私は目の所へ腕を当てて、ほんとうに泣いてしまったのだ。深山木はベッドから降りてきて、私のそばに立って、子供をあやすように、私の背中を叩きながら、何かいっていた。悲しみの他に、不思議に甘い感触があった。私のそうした態度が、相手をワクワクさせていることを、私は心の隅で自覚していた。

(引用ここまで)


ワクワク?!ワクワクだとー?!

はいっ。皆様それぞれにお気に入りの美少年が脳内でシクシク甘えるように泣いてしまいましたね。まったく、蓑浦君たらこれだから😮‍💨

さて本命カプ・諸戸道雄さんは"初代を愛する愛しの蓑浦君"に我慢できず、嫉妬のあまり密かに初代さんを口説いていました。それを告白して、初代さん殺人容疑を必死に否定する諸戸がまた甘い甘い...。涙ながらに、色々な疑惑を元に諸戸道雄を責める蓑浦君を両手でしっかり抱きしめて、耳元で優しく、君の心を慰めたい、と囁きます。


(引用ここから)

恥ずかしいことだけど、私は諸戸の腕の中で、まるで駄々っ子のようにふるまった。これはあとで考えてみると、人の前で声を出して泣いたりした恥ずかしさをごまかすためと、意識していなかったけれど、私をさほどまでも愛してくれていた諸戸に、かすかに甘える気持ちもあったのではないかと思える。

(引用ここまで)


その後2人で犯人探しを始めるのですが、『彼と相対していると彼か私かどちらかが異性ででもあるような、一種甘ったるい匂いを感じた』そうですっ。色々あって事件は大詰め(ここが物語のメインパートです)。2人は洞窟に閉じ込められてしまうんですね。


(引用ここから)

諸戸は私の腰のところへ手をまわして、しっかり抱いていてくれた。真の闇で、ニ、三寸しか隔たっていない相手の顔も見えなかったけれど、規則正しく強い呼吸が聞こえ、その暖かい息が頬にあたった。水にしめった洋服を通して彼の引き締まった筋肉が暖く私を抱擁しているのが感じられた。諸戸の体臭が、それは決していやな感じのものではなかったが、私の身近に漂っていた。それら全てが、闇の中の私を力強くした。諸戸のお陰で私は立っていることができた。

(引用ここまで)


もうね、蓑浦君甘えまくりなんですよね、大事な一線は超えない完全なヘテロな癖に...。

『僕は君と離れていては、淋しくて生きていられないことが、しみじみわかった』

な諸戸に対して

『諸戸の不思議な熱情は、私には到底理解ができなかった』

ですからね。は?理解しまくってるくせに何言っちゃってんの〜(👆👆ツンツン)ですよ。

蓑浦くん"異様な観念"とかいっていながら、諸戸に守られたいし、甘えたいし、まるで夫婦のように感じてしまうし。最後まで2人がずっと一緒にいる事を期待しているんですよね。だから本当なんてラストが....くっ。切ない....。

あ、ちなみに諸戸が蓑浦君に情けなく縋り付く時の口調が、ものすごく好きです。ちょっと情け無くて、いい意味でとても"気持ちが悪い"感じ。そして蓑浦君も、そんなに彼の崇高にもみえる愛着・執念を気持ち悪く感じながら、陶酔してる。陶酔している自分を気持ち悪く感じているというか。そして最後。あそこは諸戸自ら、選んだ結末、だとしたら。

うーん、江戸川乱歩!!

すごい取り留めない記事になったわ。

すんません!

既読のみなさんも、未読のみなさんも、是非秋の夜長の物語、読んでみてください。




漫画いくつか出版されているけどこの方の表紙がいい。作中に出てくる双子のように、気味悪く癒着しているかのような蓑浦と諸戸。


UNEXTで舞台版がみれます!でも肝心のあのシーン....うん。若干解釈違いでした💦

あの場面。絶対蓑浦君は、恐れ慄くよりも陶酔していたんじゃないかと信じているので....。





⚠️萌り沢山な『孤島の鬼』なんですが、ここで引用した部分はほんの一部です。引用部よりもっと激萌えシーンが待ち構えてますので、是非一読ください!