個人的に最近来ていると感じるリカバリーウェア銘柄を分析してみました。
まずはリカバリーウェア市場の全体感からみていければと思います。

 

 

 

リカバリーウェア市場の市況感

“睡眠×休養”の社会的関心が継続上昇

リカバリー市場は6.0兆円規模。
食品・癒し・住など広範に需要が伸びる文脈の一角としてウェアが浸透している。

ポイント

  • 着るだけ”の手軽さ×毎日使える
    一般医療機器(家庭用遠赤外線血行促進用衣)として届出された製品が増え、睡眠時/在宅で取り入れやすい。**グンゼ「SCiENSLEEP」AOKI「リカバリーケアプラス」**など量販チャネルでも入手可能に。

  • 用途の拡張(24時間化)
    MTGは日中着用も想定した“24時間リカバリー”を打ち出し、ウェアの常用化トレンドを後押し。

そんなリカバリーウェア市場でも頭ひとつ抜けているのがTENTIAL(BAKUNE)。人気で株価も好調。
一方で、ワークマンも9月から本格的に参入。
ワークマンが数千円という定価格帯で展開する中、今回の分析を経ての見解をお伝えしたい。

TENTIAL

まずはTENTIAL。
リカバリーウェア市場でのNo.1実績(24年・売上/販売数/ギフト)
トップアスリートの継続起用で認知と信頼を確立。
 一般医療機器の届出+大学/大企業との実証で“効能表示の根拠”を積み上げている。
また売上の約9割を自社チャネルで握り、1st partyデータを軸に高速PDCAを回している。
大きくこの3点が、価格競争や模倣への耐性を高めていると考える。

競合優位性

また、さらなる競合優位性として洗い出してみた。

カテゴリー・リーダーとしての“面”の強さ
BAKUNEは年間売上/販売数/ギフト売上で24年No.1(日本マーケティングリサーチ機構調査)。五輪代表やMLB選手の愛用訴求を継続し、“休養=BAKUNE”の連想を取れている。

  • ファブレス×開発内製で“速さ”を担保

    • 製造・物流は外部委託のファブレス

      • 一方で企画・エビデンス取得・マーケ・EC開発・CSを内製。季節・ギフト需要に合わせた短サイクルの投入/改良が可能。 

  • 実力を伴うスケール(業績モメンタム)

    • 25/1期は売上128.37億円、営業益14.52億円で過去最高。26/1期も増収増益計画

ワークマン

市場に風穴を開ける価格帯

そんな、リカバリーウェア市場に突如として現、ダントツの価格破壊を行おうとしているのがワークマンだ。
新製品のリカバリーウェア「メディヒール® リカバリールームシャツ」は1,900円で販売されるよう
一般医療機器の届出明記で、許容される効能表示(血行促進等)をコスト重視で実装。
TENTIAL BAKUNE
が上下2.2万円前後ということを考えれば1/10の価格水準ということになる。
まず試す層を大量に呼び込めるのが最大の武器となりそう。

安いリカバリーウェア求めるニーズってある?

とはいえリカバリーウェアってそもそも意識高いビジネスマン向きのアイテムな気もする。 そんな市場にワークマンが出して勝てるの?
そんな声も聞こえる。
ここには私も懐疑的な部分はありつつ、これまでのワークマンの功績を見るとそうも言ってられない。
そう、ワークマンが高価格帯が主流だった市場に風穴を開けたケースは割とあるのだ。

「高価格帯が強い市場でワークマンが勝った」実績

  1. アウトドア/レインウェア

    • 機能検証でTHE NORTH FACE級の防水性と評されつつ、上下5,000円前後の価格帯で“コスパ最強”の評価を確立。ランキングでも冬の重防寒1位常連。高単価ブランドが並ぶ領域で機能×価格で席巻した。

  2. アウトドア市場への新規参入(キャンプギア)

    • 参入当日サイト20万人来訪、注目品即完売レッドオーシャンに低価格・大量生産で切り込み、初年度40億円計画スタートという“面攻め”で需要を可視化した。

  3. アパレル汎用領域(WORKMAN Plus/#女子→Colors)

    • 「アウトドアブランドの3分の1価格でも遜色ない機能」で短期間に支持を獲得。広告宣伝費率0.8%でも回るアンバサダー×店舗網のモデルは、価格破壊の再現性を示す事例である。

リカバリーウェアでの“現実的な勝ち筋”

  • ワークマンの勝ち筋はエントリー層の大量獲得。ここに尽きると考える

  • 1,500–1,900円ラインでお試しの壁を破壊
    →市場の数量を押し上げる(上位帯はギフト・高触感・科学的根拠で差別化が継続)。

  • SKU拡張×棚面積:ルームシャツ→パンツ→季節・女性向けへ。Colorsの広がりとともに大量陳列→回転の勝ち筋。

逆に、勝ちにくいところ

  • プレミアムの“贈答・肌触り・耐久
    上位帯は体験価値で守られる。ここはテンシャル/VENEX/MTGなどが強い領域で、ワークマンは土俵が違うと考えるのが妥当。

  • ブランド志向の層:ラグジュアリー志向の“意識高い”層は価格以外の理由で上位帯を選ぶ。ワークマンは“初回導入”と“日常使い”を取りにいく。

総評

  • リカバリーウェア需要の地合いは追い風
    大前提、睡眠・休養ニーズは拡大中
    そして、一般医療機器「遠赤外線・血行促進用衣」で表示ルールも明確化が重要に。根拠ある訴求を準備ができている企業は伸びやすい市場にもなっている。

  • そんな中でTENTIALの強み=「証拠×ギフト×直販データ」
    ギフト期と高粗利は魅力。ただし広告費の上振れ返品・サイズ交換コストの顕在化、ギフト需要の天候(マクロ)依存はボラ要因になりそう。
    実際に母の日/父の日で売上が偏重する体質を会社自ら認めている点はリスクでもある。

  • ワークマンの強み=「超低価格×1,051店の面展開」
    エントリー層を爆速で取り込める半面、医療機器表現の運用在庫回転(季節性×サイズ展開)が常時のボトルネック。
    低価格ゆえ粗利余力が薄く
    、規制や品質対応のコストが効きやすい。
    店舗網の力は強力(期末1,051店)だが、棚面積確保とSKU拡張が進まなければ“量の伸び”は止まるのかなという所感。