注目された昨晩のイエレン議長の講演は概ね下記のような内容となりました。
① 利上げにおける慎重な姿勢は特に正当化される
② 必要に応じて刺激策を講じる余地はかなりある
③ コアインフレの加速や持続可能性の判断は時期尚早
④ 世界的動向による波及は限定的の一方、世界の動向は米国経済見通しにとって重要
⑤ 原油安や株安からの底入れなど金融市場が緩和されつつある状況は米国の緩衝剤に
⑥ 世界経済の成長鈍化は3月のFOMCの見通しに影響を及ぼす結果に
⑦ 先進国の金融政策には財政政策などの支援が欠如している
先週来、複数の地区連銀総裁から「可能な限り早期の金利正常化が望まれる」「利上げは早ければ4月のFOMCで正当化される」などのタカ派寄り発言が相次いでいただけに、ハト派寄りの議長発言に対し米2年債、10年債を中心とした債券利回りの低下からドルが対主要通貨で全面安となりました。
イエレン議長自身、中国経済の減速懸念が依然として払拭できていない状況下、年初から懸念されていた原油安や株安は明らかに回復傾向にあるものの、原油価格は40㌦台を定着するには至っておらず、米国の経済指標からも製造業を中心にした企業業績も決して盤石とは言えないだけ、ドル高への確信が持てない状況が続いているのかもしれません。今週金曜日(4月1日)に発表されるISM製造業景況指数についても昨年10月の50.1を最後にそれ以降は好不況の節目となる50.0を4ヵ月連続して下回っています。それだけに早期利上げの思惑が高まりドル高相場に戻ってしまうことになれば、インフレ期待と共に製造業を中心とした企業業績にもマイナスに作用する可能性が高く、議長の発言はそのあたりを危惧したものだったのかもしれません。
4月11日以降、アルミ大手アルコアを皮切りに1-3月期の企業決算発表が本格化します。今年1-3月期の決算が昨年10-12月期に比べ、原油安やドル高の影響をどの程度緩和し、持ち直し傾向を強めるのかが注目されます。雇用統計やISM製造業景況指数などの主要経済指標の内容は言うまでもなく、企業決算も見極めた上で、昨年12月の利上げによって生じてしまった年初からの金融市場の動揺を再発させないように、より慎重な対応を示さざるを得ないのかもしれません。
2月末の上海G20に続いた全人代を経て、中国上海株や人民元基準値などに大きな波乱は起こっていませんが、中国経済の減速懸念は依然燻り続けています。原油安・株安・中国経済といった3大懸念要因は徐々に緩和されつつあるものの、今一つ確信が持てない中で慎重さを最優先させたイエレン議長の判断が杞憂に終わるのか、米国経済の進捗は勿論ですが、引続き中国経済の行方が大きなカギを握っていることを認識させる会見でした。それだけに今後の中国の経済対策や要人発言も含めその行方にはこれまで以上に注目する必要がありそうです。