高森山(684m)は飯田市龍江地区において最高峰となる山。

自分が生まれ育った地区では、小学校の校歌に登場するほか、市民運動会の聖火の採火場所としてなど、地区を代表する里山となっている。また、山頂には富士浅間神社が祀られている。

 

参道となる道は

コンクリートの板を打ち込んだ階段となっており、周囲にはアカマツやヒメコマツなどの針葉樹など、元々のこの辺りの里山の植生が残っている。

 

登る事約5分で山頂に到着する

山頂にはお社と、三等三角点がある。

 

今回初見のものが

この赤い札。おそらく三角点を示す札で、昨年は無かったので新たに設置されたものと推察された。

三角点を管理者か、三角点を踏査する方によるものかは判らず。

 

龍江でもっとも標高が高いものの

周囲の眺望はほぼなく、唯一東側の木々の間から対岸の竜丘地区がちらりと見えるぐらい。

里山に眺望を求めてはいかんと思う。眺望を求めて伐採する事は周囲の木々を邪魔者扱いするもの。たまたま枯木があって倒した合間から見えるとかそんなぐらいに留め置くべき。

 

そんな木々に覆われ見所が無い場所に思えるが、森林に関する知識を持ち合わせた森林インストラクターだからこその愉しみがこれ

変わった形の実が特徴的な

 

「ツクバネ」が自生していること。

色んな場所で多種多様な木々を確認してますが、市内で自生しているのを見つけたのは、この場所と野底山のみ。なにせ他の針葉樹と半寄生するという、変わった生態の植物ゆえに数が少なくなっているのだろうと。

 

ここで半寄生しているのはヒノキなのか、それとも…

ともあれお隣に寄生できる木々が無いと育たないなんて、生き辛そう。

 

 

山頂では神社にお参りし、少し休んでから

元来た参道を下る

 

すると落ちている松ぼっくりが目に入る

左 ヒメコマツ  右 アカマツ

大きな松ぼっくりのヒメコマツはアカマツより数が少ない。元々植えられた訳ではなくて自生していた事と、成長もゆっくりなことから少ないのではないかと。もしくは比較的標高の高い場所で良く見かけるので、寒冷地を好むのかもしれない。

そうなると温暖化が進む現在では、ヒメコマツも生き辛さを感じているのやも。

 

森の中ってのは一律に同じ場所ってのはなく、様々な要因が絡み合って今の状態となっている。

参道沿いでもこの場所は常緑樹のソヨゴが占めているが

 

少し進むと若齢のヒノキが合間にあったり

 

ソヨゴと共にネズミサシも。

 

ネズミサシは乾燥した場所を好む

雌雄異株のヒノキ科の針葉樹。今回初めて種子が付いているのを確認。

この種も数が減っていると感じているので、見つけたら意図的に周囲の枯れ木を除くなどしてアシスト。

 

ただ、独りで出来る事は限りがあって

こうした谷間に植えられた間伐遅れの人工林や

 

植えられた場所から拡大を続けるモウソウチクに、播きつくフジ。

 

人工林はその成長度合いに応じた計画的な間伐が必要であり、拡がり続けるモウソウチクは毎年のタケノコの採種と、増えすぎた地上部の伐採が欠かせない。フジはとにかく切り続けなければ。

 

アカマツは土壌に落ち葉が積もらないよう、土壌を痩せた状態としても数が減るのは止められないのではないかと。

 

アカマツばかりの植生ならまだしも

周囲に他の木々が生えてくると、下枝を落としがちなアカマツにとっては光合成できる葉の絶対量が少なくなり、ただでさえ豊かな土壌になって生育しづらくなってダブルパンチ。

枯れてしまうアカマツの多くは、上部に僅かに枝葉が残るのみの樹形になっていることからそう考える。

 

アカマツは薪にすると火力も高く保てることから

 

陶芸にも向いてるし、自分が提供している所では味噌作りの際の豆を煮るのに最適とか。

(写真はおおきなコブの付いたアカマツ)

 

枯れて倒れたアカマツを薪にしていけば、しばらくは薪となる丸太に事欠かないかもしれないが、

この辺りの里山にあって当たり前だった樹種が無くなってしまうというのは…

自然に放置すればこうして樹種が移り変わるのが理とはいえ、何とも。

 

なおこの高森山の麓には… 山側がヒノキの人工林で

 

道を挟んで

 

中央が元水田に自然と生えた広葉樹

 

そしてその下が侵入するモウソウチクという、現在の里山の縮図とも言える光景が拡がる。

 

ヒノキの人工林はきちんと適期の間伐が必要で、モウソウチクは枯れないのでとにかく伐りつづけなければならない。

・・・・

人が減り続ける中山間地において、どちらも難。

 

それに対して広葉樹林は放置しても自然と移り変わっていく。

光差す広葉樹の下には春には野草、秋にはキノコ。

秋は落ち葉を肥料として、冬には立ち枯れたものや、枯れ落ちた枝を燃料として頂く。

 

我々だけじゃなく、様々な昆虫からそれを狙う鳥類に哺乳類にも恩恵が。

 

多種多様な生きものが棲めるのは広葉樹を中心とした多様な樹種が混ざる森。

 

そんな明るく見て近寄って楽しい森へ導きたいというのが、自分の夢。

 

元来た道には

誰かさんのワスレモノ(苦笑)

普段人が通らないこうした場所ばかり歩くので、今回無くしたら2本目になるところ(冷汗)

 

このアカマツの倒木を潜ろうとしたら

 

大きなサルノコシカケ

 

これが生えてるって事は、幹の中はかなり菌が回ってる。

薪にするなら早く玉切って割って乾燥させんと、あっというまにグズグズに崩れる。

 

倒れた樹は、こうして菌類も狙ってる。

燃料として使いたいヒトの都合は待ってくれんのな。