天竜川を見下ろす、中川村の丘にかつて巨木の榧の木が立っていました。

 

 

樹齢は310年、江戸時代からこの場所に立ち続け、人々の生活を見守ってきました。

飢饉の時には、豊富に実るカヤの実に大いに助けられたとのこと。

 

 

残念ながら今年の3月に事情あって伐採されました(詳しくは次のブログ参照↓)が、その前には私も枝の片付けなどに参加させてもらいました。

(古民家七代 カヤ日記⑥伐倒そして旅立ち)

 

その存在感は大きく

 

 

伐られた跡の切り株の周囲には、突然大きな穴が開いたよう。

 

ですが、その空間は他の木々にとって待ち望んだ瞬間でもありました。

今まで長きにわたって上空をカヤに占拠されてきたのが、無くなり陽光をそして雨水をたっぷり浴びられるようになったのです。

 

次々と様々な木々が芽生え成長を始めました。

 

その種類と数は足の踏み場に困るほど。

 

月に一度程度訪れ

観察し、

 

芽生えを遮ったり支障となる草を除きながら

 

ここまで見守ってきました(カヤの実生も確認♡)

 

芽生えた木々を種類を確認すれば、大半が鳥によって運ばれた樹種。

つまり、ここにあったカヤの木に止まった鳥たちが、周囲にあった様々な木々の実を食べてここで「糞」として排泄。

それが一斉に発芽したのです。

 

天竜川の鵞流峡での取組でも感じたのは、こうした芽生えは最初が肝心。

面倒だからと一斉に草と共に刈ってしまえば… 残念ながら二度とは生えてきません。

いくら広葉樹が萌芽能力があるといっても、一年目の実生は伐られても再生するまでの養分が根には蓄えられていません。

 

手間でも草の丈を越えるまでは、誤って伐ってしまわぬよう、鎌などで注意しながら慎重に作業をする必要があるのです。

刈払機はもってのほか。

 

大変でしたが、でも数多くの木々が活き活きと成長しているのを確認すると、苦労が報われたとの思いがヒシヒシ。

もちろん、これからがまた大変ですが、ある程度成長すれば伐っても再生するものばかり。

 

こうした人家の側であれば、大きく成長してしまえば倒れて家屋に被害が及ぶ事も考えられます。

ですが、そこまで生長する前に、人が自ら鋸で伐って「薪」として利用すればいいこと。

幸いにも古民家七代さんでは毎年恒例の「味噌づくり」の際に薪を利用するため、この木々が燃料として使えるのです。

 

そこへ至るまでの草刈が大変と思うかもしれませんが、草丈を越えた広葉樹の木々はおのずと枝葉を茂らし日光を遮るようになるため、その下に繁茂する草の生長はかなり抑えられます。(鵞流峡はもう全く草刈の必要なし)

 

また、夏場の渇水期でも実から生えたものは、自ら根を伸ばして水を求めるため、まったく水遣りせずとも枯れる事は少ないのですが、植えた木々は…(ここでも移植したカヤが枯れてしまいました)。当然自然の淘汰の中ですので、芽生えた木々の中にも様々な要因で枯れてしまうものもありますが、それは仕方ないこと。

 

ここはヒトが思う以上に複雑でかつ緻密な生態系が形作られ、作用しているのです。良かれと思って、不要なことをすればするほど、かえって悪影響になる。それを身を持って体験してきています。

 

そんなカヤの丘での取組について、古民家七代の米山永子さんが多くの方に紹介する機会を設けてくれました。

 

 

 

開始前のミーティング

米山永子さんの熱い想いを聴いて、スイッチON!

 

 

 

自分はこの燦々と陽光降り注ぐ、カヤの丘にて

 

来られた皆さんへカヤの切り株と、その周囲で始まっている様々な木々の生長について説明

 

また、まだまだ残るカヤの枝で焚火も

 

10時半からと13時からは、隣接する「天の中川公園」も含めて

この一帯における植生の現在とこれからについて説明。

 

 

古民家七代の中では様々な催し

 

 

えみばあちゃん(まさか書の先生?!似ているが…)

による薬膳スープや、この伊那谷にて活動する皆さんの出店や催し沢山。

(今回初めて主催者側に廻って気付いた「出展者は中々楽しめん(苦笑))

 

でも、こっちは比較的

ひま(苦笑)

 

出店されていた「啓榕社」さんのコーヒー豆を手回しミルで挽き

古民家七代の井戸水を、カヤの枝を火力に沸かした湯で淹れる

 

野点コーヒーを堪能

 

また、啓榕社の神藤さんから勧めてもらった「焼き柿」にチャレンジ!

 

 

その後も案内してたら、すっかり15時…

昼に買い求めた、

 

 

古民家七代米山永子さん特製「味噌カツバーガー」と

 

えみばあちゃんの薬膳スープをいただく。

 

うまいなぁ…

しみじみ

 

 

 

そして啓榕社の神藤さんのコーヒーをいただく。

ほんのりと暖かい焚火を前に至福のひととき。

 

 

そして最後のお客様、出展された皆さんを待ちました。

 

今回、森の案内ではもう一歩踏み込んだ話もしようかと思いましたが、

まずは「木々の側に暮らす事、関心を持つ事」についてのみ。

 

自分もそうであったように、実際に観察し触れ、感じることで「解る事」。

それがなければ「単に聞いて、思った」だけで終わってしまう。

 

まずは関心を持ち、実際に訪れ触れ感じてもらうこと。

そこから。

 

伊那谷の多様な森や木々について、知り感じてもらうことを企画し発信すると共に、常に自らも携わって学び伝え続けること。それが森林インストラクターの自分にとっての使命。