自然と向き合う事の面白さを、様々な機会で感じています。

特に今面白さを感じ、学んでいるのが、木々の芽生えを「見出し」「後押しする」という「森を生み出す」作業。

 

中川村の天竜川を見下ろす場所に生えていた、「榧(カヤ)の切り株の周り」にて行っています。

 

昨日は午後からこの場所での作業と観察を行ってきました。

今年3月に様々な事情で惜しまれながら伐られたカヤの巨木。

実に300年に渡ってこの場所に立ち続けていました。

詳しくはこちら↓

古民家七代【カヤ日記⑥】

 

私も伐採前からその後にかけて、作業に携わったりしてきましたが、この巨木の切り株の周囲をどうすべきか相談を受け

 

「多様な木々が茂る場所にしましょう」と提案。

 

 

天竜川の鵞流峡で得た「竹林跡を広葉樹林に変える」際に学んだ事を活かして、これまで平均月に一度ですが管理を行っています。

 

鵞流峡の竹やぶ跡地でも実感したのですが、埋もれていたり、発芽せず眠っていた種子が芽生えるのは、その上に遮るものが無くなった直後が最も多い。この時にどれだけ芽生えを見出してやり、かつ後押しできるかにかかっています。

 

この場所においては、300年にわたって存在し続けたカヤが無くなった事で、これまで遮られていた陽射しが燦々と降り注ぎ、一気に様々な広葉樹が芽生えただけでなく

 

ひっそりと生えていた常緑樹も新たな芽を出しています。

 

特に生育目覚ましいのは広葉樹の中でも「陽樹」とよばれ、生長が早い早生樹。

この場所では、人が管理する上ではちょっと困り者の「ウルシ」達。

 

でも全て伐る事なく、生長させます。(ただし間隔は調整するため、本数は抜き切りにより調整しています)

目的は、葉を茂らす事で地表に降り注ぐ陽射しを減らし、伸びると管理に気を遣う「草」の生長を抑えると共に、この後に育つ木々の保護をしてもらうこと。

 

「草を減らすのは解るが、木々の生長に欠かせない陽射しを遮るって?」

最初は自分もそう思っていました。

 

ですが、鵞流峡での取組や、様々な里山や森を歩いて観察しているうちに

「樹木の芽生えも、種類によっては直射日光が苦手なものがあり、それは陰樹と呼ばれる常緑樹だけはない」ということに気付きました。

 

ここにあった樹齢300年のカヤは、天竜川の河岸の突端の陽当りの良い場所に生えていました。

しかし最初から1本だけ生えていたのか?

燦々と降り注ぐ陽光を独り浴びて、あそこまで大きく育ったのか??

 

それは違う事にこの場所で気づきます。

 

これは、カヤの実から生えた稚樹。

カヤは陰樹ゆえに、日差しが少なくても生長できるのですが、では「日差しがあってもよかろう」と周囲に生えていた草を刈ったところ…

先端の葉が茶色くなるなど逆効果。

陽射しばかりでなく、湿気なども関係しているかもしれませんが、ある程度生長するまでは周囲に他の草や木々に囲まれている事が必要ではないかと感じています。

 

残念ながら移植したカヤの中には、この事が判らず場所が合わなかったのか枯れてしまったものもあり、可愛そうな事をしたと反省。

 

ですが、カヤは針葉樹の中では珍しく切り株からの萌芽をします。

 

これは大きな切り株から少し離れた場所にあった、以前伐られた切り株。フジなどに覆われていたのを取り去ったところ、全面から旺盛に発芽しました。切り株からの萌芽は日差しを欲しているようです。

このカヤの萌芽も、広葉樹と同じように再び大きく育つのかどうか注目しています。

 

 

ほかにも実生からのカキやエノキなども確認し、どれも生長していますが、

依頼者も必要としている薪となる樹木になるクヌギも数本植えました。

今はまだどれを残すところまでは決まっていません。

ですが、まずはそれぞれ競争する中で、考えていくこと。

 

自然の中と同じように、多種多様な木々が生長する環境を整える。

できれば植えるのではなく、その場から生える在来や眠っていた樹種が望ましい。

 

育てようとする樹種ばかりを優遇するのではなく、ある程度までは共に共存させること。

これが様々な樹種の生長に見えない効果をもたらす気がしています。