ずいぶんと以前、2008年の10月に起こした記事を、
検索の末たどり着いて読んでくださっているかたがいるようで。

こちらも再読、推敲したところ張ったリンクがほとんど無効になっていたので、
せっかくだから、修正のうえ再録しようと思う。


当時のタイトルは「筒美京平と南沙織」。
彼女のデビュー期を支えた不世出の作曲家と、
実質日本における日本製ポップスのパイオニアであった一人のアイドルによって生み出された、
珠玉の名曲に対する、深い深いリスペクトである。


2007年、『Cynthia premium』というCDボックスセットが限定版で発売され、
当方はこれをいち早く購入し、懐かしい歌声と映像を折に触れ楽しんでいる。

「シンシア」とは南沙織ちゃんのことだ、と注釈が必要なくらいには時が過ぎているかもしれないが、
いまだにファンは多いのだろう、このボックスセットも今は値を上げて取引されている。

彼女のデヴュ期の楽曲を手がけていたのが筒美京平で、
その生み出された曲の見事なまでのpopさ加減についてはファンにはおなじみ。
加えて、そこには所謂「ポップス」を聞き込んでいた音楽好きにはすぐピンとくるような元ネタが、
あるいはバレものとしてあるいは隠し味として込められていると言う事は、
夙に有名であり、かつ定評のあるところだったのだ。

これらの曲を「パクリ」だなぞと言うのはだから「野暮」なのであって、
実際、わざと似せている面もありながら、曲そのものはよく聞くと似てはいないのだ。
この高度な遊びはつまりparodyというものに一番近いのじゃないか。


まずはデヴュ曲から検証してみよう。

『17才』。
http://www.youtube.com/watch?v=FOigPL0QCts
名曲ですね。カヴァもされている。


このインスパイア元とされているのが、

ローズガーデン。
歌うはリン・アンダーソン。

http://jp.youtube.com/watch?v=etqVnea3PwY

ね。
素晴らしい出来映えでしょ。

凄いのはこの元歌をカヴァとしてシンシアに歌わせていること。

http://www.youtube.com/watch?v=0uYfZDQiyzI


アメリカ領だったころの沖縄に生まれた彼女は英語がマザータングだったこともあり、
そもそもポップスターとして売り出されたのだったが、こうした歌を原語のままカヴァ出来るのが魅力でもあったのだ。
その戦略に則り、次から次へと筒美京平の技は冴え渡る。

『傷つく世代』のイントロやオブリガードに『いとしのレイラ』のリフが使われているのもまた有名だが、これはバレものの類い。
が、もう少し隠し味的に仕上げられたものもある。

『純潔』という曲がそれ。

http://www.youtube.com/watch?v=p_NbQCG7WVo


この曲にはなんと2曲の元ネタがある。
イントロにはVan Morissonの『Wild Night 』が、
曲全体にはジリオラ・チンクエッティの『雨…』がインスパイアされているので。

http://www.youtube.com/watch?v=VX2_HahKoe4

これが『Wild Night 』。

そして

http://www.youtube.com/watch?v=-FiUnzn0-Lk

これが『雨…』。


で、この『雨…』もちゃんと南沙織ちゃんはカヴァしているのだった。日本語でだけど。
いやあ、凄いな。いい時代だったとも言えるのか。

まだまだ他の曲もいろいろ隠れていて、
それをカヴァでネタばらししているという、これはもうこのコンビだけでしか出来ない離れ業である。
もう心底リスペクト。

だからこそ、単なる剽窃で知らん顔している輩が鼻につくんだな。