戦闘シーンを一切描かないHAIRだが、闘い、局地戦をイメージさせるシーンは出てくる。
映画では、ネヴァダの砂漠の中のキャンプでの訓練の日々といよいよ出兵を控えたセレモニーのシーンである。

重苦しく不吉なマイナーブルース。
ベースのリフにのせて語られるのはこんな歌詞だ。

Ripped open by metal explosion
Caught in barbed wire
Fireball
Bullet shock
Bayonet
Electricity
Shrapnel
Throbbing meat
Electronic data processing
Black uniforms
Bare feet, carbines
Mail-order rifles
Shoot the muscles
256 Viet Cong captured
256 Viet Cong captured

死のにおいに満ちたきな臭い単語が並ぶ。

256人のヴェトコンを捕虜にした。
それはしかし成果なのか、名誉なのか。
そもそも3-5-0-0とは何を意味するのか?

歌は後半メジャーに転調してこう続く。

Prisoners in Niggertown
It's a dirty little war
Three Five Zero Zero
Take weapons up and begin to kill
Watch the long long armies drifting home

のべ260万人もの派兵。
泥沼化するヴェトナム戦争のことが語られていると思われる。
3-5-0-0とはフットボールのフォーメーションを差すコードのように聞こえるが、
実はヴェトナムで一日当たりに死ぬ兵士の平均的数、でもあるらしい。
定かなことは検索しても良くわからないが、
敵味方合わせて毎日毎日3500人もの人間が命を落としているのだとしたら、
これは尋常ならざることだ。
そんな地獄に徴兵を受けた新兵がこれがまた毎日毎日送られていくのだ。

曲は最初のコーラスに戻り、再び絶望的なマイナーブルース。

Electronic data…まで繰り返したのち次の「What a piece of work is man」にメドレーされる。
さらにその先に「Walkin in space」のリプライズにつながり、
our eyes are openという結論というか悟りというか宣言で結ばれる。

しかし事態はもう取り返しのつかないところまで行っていたのだ。
ゲリラ戦を得意とするヴェトコンの殲滅のため、アメリカ軍はすでに枯葉剤というものを使用していたから。
死と破壊の連鎖がもう起動してしまっていた、と。