結局のところ、クロードは召集に応えて入隊する。
そして戦場へ出るための厳しい訓練を速成で叩き込まれる。
遠く遠く砂漠の彼方の施設で。

もはや一般人とは隔離され、面会も許されない状況にある彼に会いに行こう、とバーガー達は思い付く。
もちろん憧れのヒト、シェイラを伴って。

出発に先立って、メンバーのひとりが息子を連れた妻に引き止められる。涙ながらに。
『COLORED SPADE』を歌ったボンバーヘッドの黒人青年ラフィエット(ハッド)の妻子である。

仲間のために生きるのはいい。
でも、私達はどうなるの? 
毎日、毎日私達を放っておいて、何をやっているの?
少しは私に愛をちょうだい。
なぜ、そんなに無慈悲になれるの?

と、シーンの意味合いとしてはそのように、かきくどくんだけど、
実はこの曲は、終わらない国と国との争いに対するメッセージとして書かれているんだなあ。

『EASY TO BE HARD』とはいとも簡単に無慈悲になる、と言う事。
自身の論理で自身の利益の為にのみ国家は動く。
その過程でその国家を構成するひとり一人の思いやささやかな幸せはあっさり切り捨てられる。
その争いは具体的な戦闘であれ、情報戦であれ、経済戦であれ、終わる事無く続く。
国家が、国家同士が存在する限り。
か弱き、ちいさな者達がそこでいつも犠牲となる。

このシーンは全体のストーリーからすれば、全くの挿入場面なのだが、
このバラードは切々と朗々ときっちりと歌われる。

「なぜ無慈悲になれるの。
なぜ簡単にNOと言えるの」

そのメッセージはどうしても欠く事は出来ない、ということなんだな。


このラフィエット(ハッド)と妻子との愁歎場のあと、一行はなんとかクルマを工面して、
クロードの慰問のため、軍のキャンプへと向かう。

クロードはここで、徴兵されたての初年兵として、
隔離され、鍛えられ、戦い、殺すための技術を詰め込まれているのだ。
オクラホマの田舎で、穏やかに暮らしていた素朴な青年が、
「お国の為」ですらない、訳の判らないパワーゲームの故に、
殺人マシーンに仕立てられ、ヴェトナムへと送られる。

いつ、「その日」が訪れるか判らない現実を前にして、
友情を交わしたバーガー達はやはり居たたまれず、会いに行こうとしたのである。

もうひとつ、高嶺の花と諦めながらも、その面影だけを胸に戦場に赴こうとするクロードに、
もう一目だけ彼女、シェイラを会わせてあげるために。

いよいよ大詰め、「3-5-0-0」そして「good morning starshine」につづく。