前世紀の終わり頃までは、渋谷や新宿の雑踏や歩行者天国で、
ラマ教の法衣を身にまとった一団がシャンシャンと鳴り物を騒がせながら、
「ハレ クリシナ~ハレ クリシナ~」と踊り練り歩く姿が見られた。
当方が目にしていないだけかも知れないが、とんと最近はそれを見ない。

ヒッピームーブメント、フラワームーブメントとは一方では、
神秘主義や宗教に対して寛容というよりはむしろ積極的だった。
ビートルズに見られるように、ヒンディー~インド音楽への傾倒も顕著で、
瞑想とかひいてはトランスについても共感度が高かった。

ティモシー・リアリーはLSDを容認し、
ラマ教はマリファナを容認した。

要するにこれは声名(しょうみょう)であり、マントラであり、
トリップソングであり、ドラッグソングである。

繰り返しというのはそもそも中毒性を持ち、トランスを誘導する。
Beads,Flowers,Freedom,Happinessと唱えるうちに、
トライブは皆ラリっていく。

映画ではそのへんの演出が強く表現され、サントラでも唯一フェードアウトになっている。
舞台では2009年版ではAquariusの詠唱となって終わる。

タイトルはこの風俗と、政治的な意思表示であるBe Inとを結びあわせている。
しかし、ドラッグに酔った者達の意見が通るほど世の中は甘く無い。
厭戦気分が高まっていた時でさえ、WASP階級のアメリカ市民たちは、
ヴェトナムもヒッピー達も切実ではなかったのかもしれない。

それでもなお、この曲は個人的に大好きである。
おぼえやすいし、繰り返しは心地良い。