この物語に対峙するとき、1968年という年を理解する必要がある、

と、これは何度も語ってきたことだが、どうしても知っておかねばならない固有名詞が、

歌詞の中に繰り返しでてくる。

それがこの曲の別名LBJ。

36代合衆国大統領リンドン・ベインズ・ジョンソン。

JFK暗殺時の副大統領で、その際にそのまま大統領に就任、その後の選挙で大勝し、

69年の1月まで任期を務めた。

いろいろと功績も多かった人だが、ケネディの路線を引き継ぐ形で始めたヴェトナムへの介入が泥沼化し、

69年の時点ではここに歌われるように、批判が集まっていた。

殊にヒッピームーブメントの中ではほとんど元凶として糾弾されていた。

それが、このイニシャルだけでつづった歌詞が語る内容。


これについては全文を引用しよう。


LBJ took the IRT


Down to 4th Street USA


When he got there


What did he see?


The youth of America on LSD



LBJ IRT


USA LSD



LSD LBJ


FBI CIA



FBI CIA

LSD LBJ



JFKの暗殺は実はこの人が裏で糸を引いていたのではないか、という説が根強くあり、

そのことも暗にここで匂わせている。

だからFBI CIAというイニシャルが出てくるのだ。


健康で貧乏で学歴の無い若者、そして愛国心に満ちて志願した若者はヴェトナムに送られ、

国内に残った、あるいは徴兵を免れた若者はLSDに酔って、命を縮めていた。

結局続くニクソン政権が幕を引くまでのべにして約2,600,000人もの兵士がアメリカから、

はるか東南アジアのジャングルへと送られたのだった。


今でこそ、CPCだのCVCだのROIだのSEOだの3文字略語を普通に仕事に使うけれども、

隠語というか、暗号というか、符牒というか、こうしたイニシャルでコミュニケーションすることによる、

隠された意味の強調ということをこの時代に試みたのは斬新だったと思う。


ちなみにこの曲も映画ではカットされている。