物語前半で最大の盛り上がりをみせるのが、タイトル曲でもあるこのナンバー。
ミュージカルというものは主題となるメロディが何度も繰り返し現れるもので、
これはクラシカルの組曲とか交響曲の伝統を継ぐもの。
「レミゼ」などではこの傾向が顕著で、主たる3つのメロディはこれでもかと繰り返される。

このHairもAquarius、Manchester、Ain't got no、Walkin in spaceなどはリプライズがあるものの
物語のタイトルをそのまま冠したこの曲は繰り返しはない。
すべてが終わったあとのカーテンコールでは流れる。
映画ではエンドロール部分である。

それほどこの曲の完成度が高く、メッセージが明確で、別歌詞をのせるのが躊躇われたのだろう。
1968年における、長髪の意味を現代に生きる我々は読み取って解釈せねばならないが。

どこまでも、長く無造作に伸び放題にした髪は、
直接的には徴兵に対するNoであり、ひいては反戦と自由の意思表示であったということ。
それを切り落とされるのは命を失うのに等しい。
そうかき口説く歌は映画では収監された牢獄内でトライブ達とアンサンブルされる。

大いなるテーマの提示がここでなされた。
それでもヴェトナムでは戦火が拡大している。
毎日兵隊が送られ、毎日人が敵も味方も死んでいる。
そもそも敵とは誰か、味方とは何を言うのか。

やがて悲劇的な結末に向けて、様々な問題がひとつひとつ提示されていく。