ヒッピーというのは今で言えばホームレスに近い。

もちろんもともと学生だったり、仕事を持っていないものが多かったろうが、
自らドロップアウトしてセントラルパークあたりにたむろしながら、
歌ったり踊ったり絵を描いたり祈ったりラリッたりデモったりしてたわけだ。
ドロップアウトと言っても、自由と平和を求めての抗議行動であり、闘争であるのだが。

当然家無し金無し状態だから、なにも無い。
それ以前に人種差別や格差社会によって、
ホワイトカラーたちが当然の様に持ち合わせている物さえ持ってない。

それを揶揄するのがこのAin't got no。
この曲へのイントロとして歌われるのがI'm blackである。

様々な人種が集まった仲間たちが歌いはじめる。

I'm black, I'm black
I'm pink, I'm pink
I'm rinso white
I'm invisible...

ストレートに肌の色を歌っているその裏には、
その色なりの卑下、結局ちっぽけなmankindに過ぎない、という諦観も隠れている様な気がする。
rinso whiteとは漂白した白、という意味だが、
これはマイケル・ジャクソンの事を言ってる訳では無い。

画面ではからっと明るく、その不遇とそれに対する不満を歌い踊っているが、
当時のアメリカの抱える問題がそこに網羅されているのはもちろんである。

そして、国の為にと徴兵に応じてやってきたクロードは、
実は自分は彼らの様な信念も信条も何も持たない人間だったと気付かされ、
ぼくは透明人間だ、と吐露するのだった。

しかしそもそも徴兵に応じない、その令状を廃棄したりすることはすでに違法行為。
ヒッピーで居る事はすなわちアウトローでもある。
閉塞的な状況でドラッグに溺れるものも現れる。
立場無き物の意見は黙殺される。
そして若者は際限なくヴェトナムに送られる。貧しきマイノリティから順番に。

つまりそんな時代だったのだ、1967年頃は。