それからの成均館 -16ページ目

それからの成均館

『成均館スキャンダル』の二次小説です。ブログ主はコロ応援隊隊員ですので多少の贔屓はご容赦下さいませ。

㊟成均館スキャンダルの登場人物による創作です。

  ご注意ください。

 

 

 軽い夜食を摂ったジェシンとユニは、いつも眠る前に寄り添って話をする。疲れ切った日でも、ただ傍にいるだけでも良かった。とにかく、よほどの体調不良の時以外は、二人は共寝をする。これもヨンハに言わせると恐ろしいほど世の両班の夫婦の生活から外れているらしく、お前の執念は・・・と言いよどんだその後ろ頭をはたいたことも懐かしい。

 

 意味はあるのだ。正直、成均館の東斎中二坊でずっと隣に寝ていたのだ。今更別に寝る必要はない、と思っていることと、そして。

 

 暗行御史含め、不在がちだった若い夫婦の日々。不安だったろう、困ったこともあっただろう、けれどユニは長男、次男をしっかりと育てながらジェシンの戻りを待っていてくれた。長女が生まれて以降は、暗行御史の仕事もなくなった。それでも、一緒にいることのできなかった夜の数を数えると、ジェシンはユニが幾晩か一人で涙を流した日もあったのではないかと心が寒くなる。そんな思いをさせないために傍にいると決めたのに、出来なかった。仕事だから。分かっている。分かっているからユニは何も言わなかったのだ。ジェシンがどんな仕事をしているか知っているから。けれどムン家に入り、弱音を吐く相手が夫のジェシンしかいない中、ユニがどんなに舅姑が良くしてくれたとは言っても、辛いこともあっただろうと思う。

 

 傍にいる証明なのだ。共に眠ることは。勿論ジェシンが傍にいたいだけだともいえる。何しろもう、ユニのぬくもりがない寝床は思い出せない。それぐらい一緒に眠りについてきた。

 

 

 次男が訪ねてきたこと、その時に話したことをユニがジェシンに語る。生意気言いやがる、とジェシンがぼやくと、ユニはくすくす笑う。

 

 「それでもね、ほっとしたの。」

 

 「・・・まあ、分からんでもない。」

 

 「私はね、子供に教えることも何もかも、お義母様お義父様に自由にさせていただいたでしょ?それでも出しゃばりな嫁だと思われているのではないかと不安だったの。」

 

 「それはねえな・・・。俺よりも信用があるからな、ユニは。」

 

 「ふふ、それは旦那様の面倒くさがり癖に感謝すべきなのかしら。」

 

 「いや、丸々任せたことは感謝しなくていい。俺が出来ないこととやってくれたんだから胸を張っておけ。」

 

 ジェシンはユニの背中をゆっくりと撫でた。

 

 「だが、息子がユニの学識を評価しているのは、まあ、褒めてやらんこともない。」

 

 「・・・うれしかったの。別に誰よりも前に出ようと思っているわけではないの。けれど、女人に学問の素養があっても何の邪魔にもならない。協力してやっていけることが多々あるのだと・・・あの子が思ってくれているのがうれしいの。」

 

 長男と次男は同じ位の優秀さで学問に秀でていた。さすが秀才のジェシンとユニの子であると言われている。子供からしてもユニからしても、学問の基礎を教えられ、教えしただけではある。だが、実際に世に出て、いかに一人で何かをするのが大変だと分かったとき、同等に話をできる人が傍にいることがどれほど力になるか、分かっただろう。次男はそれを言いに来たのだ。父上は幸せです。手を取り合って生きていける人が隣にいるのですから、と。

 

 「あいつみたいなのが増えたらいい。ユニが生きやすい世に、変わっていってくれたらいい。」

 

 そうジェシンが言うと、あら、とユニは笑った。

 

 「いつ私が生きにくいって言いました?私は旦那様の傍でどれだけ楽に息をしてきたか、お分かりになっていないの?」

 

 胸元にいるユニを見やると、ジェシンを見上げて笑っている。

 

 役に立つ立たたないだけではない。こうやって夫婦として一緒にいる事。そこに信頼と愛情がある事。だからこそユニはのびのびとやってこれたのだ、と。

 

 「私は、全部貰っているの。女人としての幸せも・・・そして役立つことをできる環境も。王宮でも屋敷内でも同じだったわ。私はとても大事な役目を頂いて、信頼も戴いて、その信頼に応えるべく働くことが出来ているの。そして旦那様。あなたがこうやってずっと傍にいてくださるっていうご褒美が・・・。」

 

 その夜、もう夫婦の間に言葉はいらなかった。

 

 

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